チェロの上達、特に初歩の練習者にとってその「鍵」となるのは誰が何といっても「オクターブ」がしっかり合っていること。しっかり聴き分けられること。それ以外はありません。言い換えればオクターブさえ合っていれば、後は何とかなるとも言えます。

音楽の知識がない方に説明しますと、オクターブとは例えば、あるA(ラの音)の音から一巡り上のA、または一巡り下のAということ。
数字で説明すると下が220Hzの周波数だとすると上が440HzのAということです。楽音での倍音列でも最初の倍音はオクターブで、最初に聞こえます。次が五度。
家で言えば一階と二階、一階と地下のようなもの。同じ家です。五度や三度は親類の家のような感じです。

つまり同族の音なのです。

以前にもお話ししたことがありますが、私自身も練習の初めは、まずオクターブを合わせることから始めます。五度や三度を合わせるのは次の段階です。

弦楽器でオクターブが合っていない演奏ほど耳障りなものはありません。正確なオクターブ、それは基本中の基本。合奏する場合でも同じです。それもできないのに、表現がどうの、ボウイング云々、音色がどうこう言うのは、まさに滑稽と言うしかありません。いくら技術を磨こうが、それはまさに砂の上に豪邸を建てようとするもの。

砂上の楼閣

オクターブを正確に合わせる。これは技術の練習というよりは耳の訓練私のレッスンでもあるのです。たとえ老いた耳にとってもオクターブのズレだけは認知しやすいもの。
生徒には、この点だけは厳しくしています。生徒の将来がかかっているのですから。

(なかなかそれに気がついてくれる生徒は稀ではありますが)

練習としてはまず、第一ポジションで4(小指)の指でCやGやDの音を押さえて、隣の解放弦と合わせる。1(人差し指)と一本弦をまたいだ上の弦とを合わせる。
単純な作業ですが、初心者には結構難しいものです。しかしこれを怠ると上達は望めません。いつまでたってもいい加減な演奏に甘んじることとなるのです。
さらに、少し進歩した生徒でも第一ポジションの4の指の位置から順番に指を代えていけば他のポジション練習にも繋がります。その時、今押さえている指以外の指は、各弦でどの音に位置しているかを認識する必要があります。これをやればしち面倒くさいメソードなどやる必要もなくなるかもしれません。

音には完全に正しく合った音の高さ(音程ではない)など存在しません。
全て、ある音からの隔たりによって音の高さ(音程)は決まるからです。あそこの音程は悪いというのではなく、基準となる音の把握ができていなかったと言うべきです。
オクターブは同族、家族のような存在です。家族である基本のオクターブがずれていれば、つまり家族不和、音楽など成り立たないし存在する意味もないと思いませんか?

社会の基本は家庭です。
家族は大切にしましょう!

家族を守る家には鍵をかけ忘れないように!

音楽の「鍵」はオクターブ。