実践編 6
ポーカーフェースでいこう!

最後に演奏者がコンサートの舞台でとるべき大切な行動についてお話しします。これもあがり症を持つ人にとっては関係が深い問題でもありますので、演奏家は常に真剣に考えていなければなりません。

まず、貴方が極端なあがり症だったとしましょう。その時の貴方の動きを観察してみると、まず舞台に出る前からソワソワ、顔が引きつり顔面蒼白。足もおぼつかずもつれそう、手の指も強張り口もカラカラ、舞台の自分の場所にどうやってたどり着いたかも記憶にない…、ということもあるかも知れません。これらの緊張からくる不安な動作は意外にも周りの者にも動揺を与えるものです。それほどあがっていない人にも雰囲気が伝染してしまって、あがっていないこちらも、なにか不安になってきたりします。
もしも演奏前からあがって身体がガチガチになってしまった時は、できるだけ意識的に動作を遅くとるようにしましょう。舞台に出る時も歩幅を普段よりもほんの少し大きくとっても良いかも知れません。これはいくらあがった状態でも実行可能です。舞台でのゆったりとした動作は人々に安心感を与えますし、自分の心をも確実に落ち着かせます。深呼吸したり手の平に書いた人の文字を飲む必要もありません。
もう一つの恐怖、聴衆の視線が怖い、このように感じている方も多いことでしょう。これは聴衆の視線から目を背けようとするからかえって怖くなるのです。時々目をつむって演奏する人もいますが、自分の中に入り込むのには都合がいいでしょうが、やはりしっかり目を見開き周りを見ながら弾いたほうが、聴衆やその場との一体感は遥かに得られやすくなります。
しっかり目を開けて、それぞれのお客さんと目を合わせるようにしながら弾けたら最高です。
普段から人と会話する時もヨーロッパ人のように相手の目を見ながら話す習慣を日本人も持つべきだと思います。これは演奏にも役に立ちます。
とにかくあがって内心逃げ出したくなるような時も周りにその心中を察しられないようにしましょう。嘘も言い続けているとそれが本当に思えるようになったり、間違えた言葉が使い続けるうちに、やがて正しい言葉として認められるように、自分をあがっていないように振る舞い装うことは音楽家にとってはとても大切なことだと思います。
動作と心は密接に関わりあっています。動作で自分の心を騙すのです。
皆さん、あがって苦しい時もポーカーフェースでいきましょう。

後のビールが美味いですゾ!