指が乾燥してカサカサになる。
私自身、子供の頃は後年まったくそんなことになるとは夢にも思いませんでした。むしろ大人が指を舐めなめお札を数えているのを不思議に思っていたくらいです。指ってそんなに美味しいの?って。
しかし自分も歳と共に肌はカサカサ、指は唾をつけなければ滑って楽譜もめくれない状態になってきたのです。特に冬の時期は酷いもの。おまけに指先が「あかぎれ」とは。こんな形で老化がくるとは、情けないことです。
当然、チェロを弾く時もこの乾燥した手や指は多く影響を及ぼします。
ガット弦では問題はないのですが、スティール弦では左手は指が弦の上を滑り、ヴィブラートをかける時など、ポジションが安定しないという問題が発生します。
 
しかし右手の場合はもっと深刻。乾燥しきった指では弓がまともに握れず弓の背中をするすると滑ってしまいます。これでは不安定です。
特に薬指や小指が弓の背中を滑り、弓の保持が不安定になってしまえば、それだけ演奏にも不安感を抱くようになり、結果として、弓を強く握ってしまいます。さらに普段リラックスしている筋肉にまで緊張の影響を及ぼしてしまう。まさにこの不安定さによる緊張が痙攣を引き起こすのです。
 
私も色々と対策を考えました。
指を舐めながら弾く、、指に松脂を塗るなど。しかし、これらは演奏会での使用はとても無理です。他には例えば、誰でも考えることですが、手に保湿クリームを塗る。これは手が何となくぬるぬるして不快感を感じ、演奏には不適格。すぐに却下。
次には何か滑り止めを弓の背中に張る。まず考えられるのは弓の背中にテープを張る。
色々なテープを試しました。例えば製本テープ、マスキングテープ、絆創膏、コルクのテープ等々、しかしどれも更に指が滑りやすくなったり違和感があったりで、すべてダメ。
 
しかし、弓を滑らなくするためには、結局何か滑り止めを弓を張るしか他に手立てはないのです。
 
次に考えたのは、よく一般的に行われている方法なのですが、弓の背中に薄い革を張り付けること。勿論、これも試しました。しかし、革は初めは調子が良いのですが、すぐにツルツルになってしまうのです。そうなれば、邪魔な存在でしかありません。
 
そこで最期の切り札。
 
もう、やけくそになって、
それでは指に弓を糊でくっ付けてしまえ!
ということになり、弓の背中にゴム糊を塗り、少し乾かしてから弓を持ってみたのです。
 
あら不思議!
 
まあ当然ではありますが、弓が手に密着するではありませか!
 
しかしこれでは今度は指が弓に張り付いてしまい、あまりにも使いにくいし、何よりも弓が非常に汚ならしくなってしまいます。
そこで、ゴム糊を塗るならいっそのこと弓の背中に薄いゴムのシートを貼ってみようということで、ホームセンターで適当なゴムシートを探しだしたのです。それが写真1の左にある厚さ0,5ミリの飴ゴムのシートです。写真のように、長いゴムシートをコイル状に巻かれて売られています。東急ハンズで見つけました。
これなら薄くて軽いので弓のバランスには影響はほとんどありません。
 
それを小さく切り、弓の背中に合わせて張り付けてみたのです。これはとても柔らかく適度に弓が指に密着し、手に馴染むので、運弓がとても安定します。まあ安心感も違います。私のように手が乾燥でカサカサ、油っけがない方は試してみて下さい。
 
貼る場所は写真2にあるように、まずは弓に薬指と小指が当たる場所に貼ります。薬指と小指だけでは心許ないという方は親指と人差し指が当たる場所にも貼ってみて下さい。特に親指に貼るのは弓の保護にもなります。
 
尚、貼る時は必ずゴム糊か水溶性の糊、例えばスティックタイプの糊などを使用してください。写真1にあるような自転車パンク修理用のゴム糊は揮発性ですが剥がす時に綺麗に剥がれますので、私はこれを使っています。
 
 
指が滑る。
 
まあ、歳をとれば若い頃には想像もつかなかったようなことが現実問題として起こるのですね。
 
 
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