Effect_20171221_060551Effect_20171221_055933Effect_20171220_080851ヴィブラートについて当ブログでも時々取り上げるのですが、なかなか文章ではその極意が伝わらないのが残念です。しかし一人でも多くの方に私の考えを伝えたいため、今日も頑張って書きます。
 
今日はチェロのヴィブラートの具体的なかけ方、特に技術的な方法について説明します。
 
さて、私達がチェロでヴィブラートをかける時に基本的概念として持つべきことでまず大切なことは、ヴィブラートは今弾いている音を中心として低音域にかけるものだということを理解することです。そしてもうひとつ、ヴィブラートは回転運動だということ。振り子運動とも捉えることができます。
 
図1を見ていただくとお分かりいただけるかと思いますが、赤い色で書いた指は今弾いている音(基音)の左指の角度とします。黒い指との間はヴィブラートの振幅だと思ってください。向かって右側が高音ということです。黒い指は指が最も低音側に倒れた位置と思ってください。この間の回転運動です。指板(弦)と手のひらとの平行運動ではありません。
 
ではなぜ低音域にヴィブラートをかけるのかというと、まず人間の耳の特性を考えなければなりません。つまり人の耳は高低差がある動く二つの音があるとすれば高音域には敏感に反応しますが、それに比べて低音域ではかなり鈍感です。ですから今弾いている音(基音)を中心として図2のように高音域と低音域とを交互、または基音から高音域にヴィブラートをかけてしまえば人間の耳には高音域ばかり目立って聴こえてしまうということになります。したがって、聴こえてくる音は上ずった不安定な音になってしまうでしょう。最悪の場合、狼の遠吠え、ヴィブラートばかりが強調された下手くそなド演歌になってしまいます。
 
では理想的なヴィブラートにおいて、左指及び手首や腕は具体的にどのような動きをしているのでしょうか。
 
運動の基本は肘と親指を回転軸とした回転運動です。他の指はそれに伴ったしなやかな指の屈伸運動です。写真1、写真2で示したように指の関節をいつでも屈伸できるように柔らかく構えます。写真1は基音を弾いている時、写真2は指が低音側に倒れた時。この交互の動きが美しいヴィブラートの基礎となります。写真2で指の関節が伸びていることに注意してください。
 
その時、手のひらは弦と平行では関節は使えません。ごくわずかではありますが高音側を向いているべきです。
また平行に構えてしまうと基音を越えて高音側にかかってしまう危険性がありますからくれぐれも注意してください。
 
何度も申し上げますようにヴィブラートは回転運動であり、決して弦を揉みしごいたり痙攣させたりするわけではありません。その回転運動を実感するためには写真3で示したような練習が効果的です。
テーブルなどに親指を引っかけ、肘をぐらぐら動かないように止めます。その時、決して肘や手首は硬直させてはいけません。
そして手首を含む他の指を左右に振ってみてください。この脱力した動きが理想的なヴィブラートの基礎となります。右指で左親指をぶら下げて代用しても良いでしょう。
次にこの動きを実際にチェロを使ってやってみます。まずチェロをギターのように構えネックに親指をぶら下げます。その時、肘から手首まで十分だってして回転運動が実感できれば、いよいよチェロを正しく構えます。そしてネックの裏に親指をあてがい肘とおを中心に手首や他の指を振ってみてください。その時はまだ指は弦を押さえなくて結構です。
 
その動作を行う時、弦と直角になにか見えない壁があるものと仮定してそれをノックするような気分で腕を振っても良いでしょう。その壁を越えると高音域です。
 
肘から先がどの部分にも力が抜けしなるような動きができるようになれば親指以外の指を弦上に乗せて同じ動きをやってみます。最初は弦を押さえず指で弦を拭くような動作から始めます。上手く親指と肘を中心とする回転運動ができるようになれば次第に指を決めて弦を押さえていきます。初めは2の指(薬指)がやりやすいでしょう。次に1、3、4の順で行います。
 
尚、ヴィブラートをかける時、親指の位置を少し変えるだけでもかかり方には変化がありますので色々試してください。親指とヴィブラートをかける指とが対面してしまうと、手首は硬くなり回転運動を阻害してしまう傾向がありますので注意が必要です。
つまり、親指の場所は一定ではないということです。
 
以上、ヴィブラートを美しくかける基本的方法でした。色々申し上げましたが、やはり基本的にヴィブラートがない音が美しくなければなりません。決してヴィブラートで汚い音を誤魔化すことにならぬよう気をつけたいものです。
ヴィブラートを文字で説明することは困難なことです。しかし実際のレッスンで説明すれば、なんだそんなことだったのかと思われるでしょう。
 
これからもレッスンに来られない方や独学で練習する方のためにも時々チェロのテクニックについてはお話ししていこうと思っています。Effect_20171221_061141Effect_20171220_081046