◎ 2 金食い虫

日本という国で音楽家になるのはとてもお金がかかります。

オーケストラに勤めている人も裕福な家庭で育ったという人がほとんどです。

では、なぜそんなに金がかかるのか。音楽家になるには、まず早い時期から自分の将来を決め、やりたい楽器を決めます(やりたい事が見つからず、いくつになってもぶらぶらしている若者が多いなか素晴らしいことだとは思いますが)。音大や芸大を目指す段階で、さらにそれ相応のレッスンを受けなければなりません。レッスン代も良い先生はとても高いことが多く(私のレッスン料は安いですが…)、音大の先生ともなるとべらぼうな金額を要求されることもざらにあります。さらに地方に住んでいる生徒なら都会まで通わなければなりません。それが毎週ともなると交通費だけでも大変な額になるでしょう。
そしてオーケストラの楽器なら高価な楽器を買い与えなければなりません。
管楽器ならまだしも弦楽器なら分数の楽器を定期的に買い替えていかなければならず、フルサイズともなると良い物はびっくりするような金額です。
やがて、音大及び芸大に入学するとなりますと、高い入学金と授業料が待ち構えています。地方の学生が都会に下宿でもしようものなら、それこそ大変なことになるでしょう。大学がたとえ国公立であっても、入学し卒業するまでにいかに莫大な金がかかることがお分かいただけるかと思います。
さて、大学も卒業する頃となり仕事を見つけなければなりません。しかしそんな簡単に音楽の仕事が見つかるでしょうか?

答はNO! です。

まず考えられるのは中学高校の音楽教師、しかし教師になるのは狭き門。
オーケストラの楽器ならオーケストラに入団すること。これぐらいしか道はありません。しかもオーケストラでも狭き門には変わりがなく、数少ない席にありつくのは至難の業。どんなに上手くても席がなければ入れません。大抵はフリーをしながら席が空くのを待ちます。一般の企業に勤めようとしても音大生は在学中音楽だけにのめり込んでいるので、潰しが全くきかない。 裕福な家庭で甘やかされて育った人が多く、わがままで、自分は音楽家だという変なプライドばかり高い。
結果、することもなくフリーのプレイヤーと称してただぶらぶらしている人がなんと多いことでしょうか。
たとえプロオーケストラに入っても給料が安く全く食えない。あれだけ金をかけたのにまったく元が取れない。やはり日本は音楽後進国。音楽というものが単なる芸事に過ぎないのでしょう。音楽家という職業が社会の歯車の一部に全然なっていない。つまり日本に音楽家という職業が無くてもべつに何の不都合もないのです。誰も困らない。

私は個人的には日本に音大や芸大は要らないと思います。
フランスやスイスのような音楽院(コンセルヴァトワール)を設けるべきだと思うのです。
ヨーロッパの音楽院は日本の音大や芸大とは異なり大学ではありません。音楽学校なのです。他の大学で医学や法律を学びながら音楽院で音楽を学ぶ人も沢山います。
特に優れた才能の持ち主だけをプロとして活躍させるのです。
ヨーロッパでは特別な才能がある人だけが音楽家として認められ、日本のように大学で音楽を誰もが広く浅く学べるシステムではないのです。
このシステムだと日本でも音楽家を目指し落ちこぼれる若者がもっと少なくなるのではないでしょうか。

続く