◎ 良い音とは?

自分の音は、はたして良い音なのか悪い音なのかがわからない、と悩んでいる方は沢山おられますね。私の生徒のなかにもそういう方はおられます。
自分の声が他人にはどのように聞こえているのかわからないのと同じように、楽器の音も自分が弾いて自分の耳に聞こえる音と、その音を他人が聞くのではかなりの印象の隔たりがあるものです。録音で自分の声を聞いてびっくりすることもありますよね。こんな酷い声だとは思わなかったと。あれと同じです。
そこで、今日は自分の音をどこに出しても恥ずかしくないような音にするにはどうすれば良いのかを考えてみたいと思います。

声楽家ではボイストレーナーを依頼したりすることは多いものですが、器楽奏者では普通そのようなことをする人はありません。
強いて自分の音を判断しようと思えば、レッスンを受けて先生から指摘を受けることくらいしか考えられません。録音も当てにはなりません。
レッスンも一生受け続けられるものではありませんので、他人にはどう聞こえているのかわからないにしても、こんな時にはこうなるということを自分で自分の音を判断する基準と修正の手段くらいは持つべきです。

まず基本的に、当然のことながら自分の音をしっかり冷静に聞くということ。その時、まず音の立ち上がりが今弾いている曲の雰囲気に合っているかどうかを確認します。
それ以前に音の立ち上がりがかすれていないかをしっかり注意して聞くことが大切でしょう。
アマチュア、特に初心者の中では音の立ち上がりがかすれていても平気で弾いている人を結構よく見かけます。音のかすれは絶対避けるべきです。かすれほど演奏のイメージを落とすものはありません。また、かすれはとても目立つので音色の判断の基準としては最も簡単でもあります。
音の立ち上がりがかすれるとそのボウイングはすべてかすれてしまいます。また音の立ち上がりの善し悪しは、その演奏のイメージすべてをマイナスの方向に決定付けてしまいますから弦に弓の毛を置くときは常に細心の注意が必要です。
次に指の動きと弓の動きが完全にシンクロしているかどうか。そして弓の速さと弓にかかる圧力が完全にバランスが取れているかどうか。
そして、これに関係していますが、音または音符の長さに弓の量的配分がうまくいっているかどうか。(例えば、音符が長くても短くてもすべて全弓で弾いていたらとても乱暴な音になりますよね?)
これらのことを気をつけるだけでも聞き手には演奏がすっきりして上手なイメージを与えますし、自分に聞こえる音も綺麗に聞こえるものです。
基本的にこれらのことが守られて演奏するなら、後は自分自身の人間性に委ねるしか方法はありません。
音の善し悪し、演奏の善し悪しは弾く人の性格の善し悪しでもあるのですから。
いくら演奏が上手くても性格の悪さを感じる演奏などいくらでもあるものです。

終わり