◎ 3 フェルマータの極意

楽譜を見ているとよくフェルマータに出くわします。形は元来目の形を模したもので、オーケストラで弾いている人がよく楽譜に注意するヵ所としてメガネの形を書きますが、元々あれと同じように注意を促す部分に使われていたようです。
今では音楽の終結を示したり一旦停止を示す記号として使われます。
演奏法として後期ロマン派の時代では、音符にフェルマータの記号があればその音符の長さを倍に伸ばすという方法が流行していたようですが、演奏としてはとても便利な方法ではあるものの、本来のフェルマータの意味からは遠く離れています。
フェルマータという言葉には元々伸ばすという意味はなく、停留所つまり停止するという意味なのです。
音符にフェルマータがあれば、まずは一旦停止させなければなりません(曲の最後の音符にあれば文字通り停止です)。テンポを数えてはいけないのです(よく、音を伸ばしながら首を振って数えている人を見かけますが、あれは明らかに間違いです)。
しかし、音楽も生き物。完全に息まで止まってしまえば、それは死んでしまったと同じこと。歩みを停めるだけで良いのです。
歩みを停めても心臓は確実に鼓動しているでしょう?息もしているはずです。“無”ではありません。曲の最後の音符に付いても同じこと。感動の鼓動を味わいましょう。 これがフェルマータの正しい捉え方です。
演奏法として、フェルマータに入る時は曲の速さの程度によれば少し遅くするのも良い方法です。人の歩みも止まる時は少し遅くなるものです。しかし遅い曲でフェルマータの直前に遅くし過ぎると、フェルマータが長くなりすぎ次の一歩が踏み出せなくなることもあるので注意が必要です。速い動きや大音量での急停車は良くありません。(例外もあります)

次に歩みを再開する時は息を一息吸ってから一歩を踏み出すのです。