◎Op.2ー2

次に感情について考えてみます。
感情については、こういう言い方もできます。
どんな強烈な感情もいずれは沈静するのです。どんなに怒っていてもあくる日にはケロッとしていたり、悲しいことがあっても人は泣き止むのです。泣きっぱなしでは生きていけませんし怒りっぱなしというのもありえません。宇宙もビッグバンから膨張はしますがまた静止状態に戻るのと同じことです。
ゴムでも引っ張れば伸びるし圧力をかければ凹みますね。ほって置けば元に戻ろうとします。メトロノームや時計などの振り子でも常に静止しようとしますね。音楽でもこれとまったく同じです。ずっとフォルテ、ずっとピアノということは自然現象からみても絶対ありえないことです。
放っておけば演奏はだだちに静止状態に向かいます。自然現象に逆らいずっとフォルテのままであったり、常に小さく小さく“いじけた”ような音楽が、いかに身体精神に悪いか理解していただけることと信じております。
フォルテであったりピアノなどが出現する音楽は、まったく自然界における私達の精神活動、いや自然そのものだと思います。
ハンスペーター・シュミッツ教授の著書《演奏の原理》にはこれに似たことが表にして書かれていますが、表通りにいかないのも音楽の面白さなのではないでしょうか。

つづく