其ノ二
◎書き込みの話

そもそもオーケストラでは、あまりたくさん楽譜に書き込むのは良くないことです。意図的に楽譜を見にくくしていることがあまりにも多すぎ。
これも女性のオケ弾きに多いのですが、彼女達は何でも書き込まなければは気がすまないようです(これをクソ真面目といいますが)。それも薄く細い字で。
ボウインクなどは大抵書きすぎです。普通ダウンの記号を書けば次は何も書かなくてもアップです。ダウンが続くときとかアップが続くときだけは改めて続けて書けば良いのです。それをいちいち書いていると、大事な所や特徴的なボウインクが目立たずわかり辛く、かえってミスにつながるでしょう。そんな楽譜を見てるだけでストレスになってしまいます。
そもそもなぜボウインクを合わせるのか。それは見栄えの良さと、隣の人に弓がぶつからないようにする、ただそれだけです。見栄えのために中身が疎かになっても良いのでしょうか。

少しぐらいボウインクがずれても、別に何の問題にもなりません。ボウインクが綺麗に揃っていることより演奏の中身の方が大切だからです。
逆に言えば中身がないから、せめて見かけにこだわるのかも知れませんね。
書き込みはできるだけ控え目に!これは鉄則です。これを守ると、もっとオーケストラ生活は快適に楽しくなるはずです。
いろいろ書き込み過ぎた楽譜を見る習慣に染まってしまうと自分の想像力まで奪われてしまうことに気が付くべきです。
ボウインクを律儀に合わせることでいうと、他の楽器でも全て1stバイオリンに合わせる人がいますが、あれも変ですね。楽器の性能や音型の違いを犠牲にしてまで合わせる意味などどこにあるのでしょうか。不思議です。
指揮者の指示など各自覚えればいいだけの話です。または指揮をいつも注意していること、そんな単純なことができていないだけの話でしょう。本番で指揮者はどう振るかわかりません。書き込んだ通りにはいかないことも多々あるので、これは基本です。
また一度書いた書き込みは消さないものですから、見にくさに拍車をかけます。さらには指揮者に、ここにはこんな書き込みがあるのですが、と質問する面倒臭い人間もいたりして、時間の無駄も甚だしい限りです。

やはり慣れは人間には付き物、書くという習慣が身につくと、あまり何も書かれていない楽譜を見た時は不安でしかたなくなるものです。しかし、私など書き込みだらけの楽譜を見て慣れきった演奏なんか、ちっとも面白くないと思うのですがねぇ。 

つづく