◎其ノ三
耳、自分の場合
何故聴覚の大切さについて、くどくお話するかといいますと、私自身にも聴覚についての苦しい経験があるからです。
聴覚の故障はある日突然、前触れなくやって来ます。
その事件は2014年の2月の事でした。
ある朝、いつもと同じように目覚めると、何故か右耳に違和感があるのです。
耳に綿を詰めたような、又は耳に水が入ったとでも表現できる、酷い不快感に驚き飛び起きました。更にチェロのG線のような低い耳鳴りが鳴り続けているのです。一瞬、風邪かな、とも考えたのですが他には症状がありませんし、今までそんな症状に襲われたこともありません。耳鳴り以外の音も聞こえません。様子を見てみようと、二三日放っておいたのですが、いっこうに症状が治まる気配がなく、意を決して近所の耳鼻咽喉科を受診しました。病名はなんと“突発性難聴”とのこと。
まだはっきりとした原因は分かっておらず、放っておくと聴覚を失う事もあり、治療は早ければ早い程良いそうです。
あの時の不快感は一生忘れられません。平行感覚が失われ、身体が斜めになっているのか真っすぐなのかもわかりません。チェロを弾いても左耳だけでは、普段とは全く違った音に聞こえます。そして酷い目眩に伴う吐き気。あれはまさに地獄でした。
治療は飲み薬の投薬だけでした。幸い治療開始から二週間程で効果が現れ始め、一ヶ月程で一応完治しましたが、この事件で耳が聴こえることの有り難さを実感したのです。
やはり歳ということでしょうか、知らず知らずのうちに耳を酷使していたのかも知れません。またはストレスによるものかも知れません。
皆さん、どうぞ身体をいたわりながら音楽を探求致しましょう。
続く
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