◎其ノ四
テンポについて

演奏に必死になるとどうしてもテンポを取ることがおろそかになりがちです。テンポは気分で流されやすく。頭で理解しているだけでは一定のテンポはとれません。言いかえると雰囲気でリズムは取れてもテンポは取れないということです。例えば身体の仕組みを頭では理解しているつもりでも、自分の意思で心臓の動きを止めたり腸の働きを調節し消化吸収をコントロールすることはできません。
これは自立神経の働きですが、それは音楽にも当てはまります。
音楽もひとつの生命体とも考えられます。音楽も生きているのです。
音楽を活力あるものにする、そのためには常に音楽の根底に滞りなく流れる鼓動や血の流れのようなものが必要となります。それが潜在的なテンポなのです。その流れが健康的に滞りなく流れている人を、あの人はテンポ感がいいとかリズム感がいいという訳です。その演奏は聞いていても生命力が感じられます。
反対にあちこち血栓が詰まったり、コレステロールが詰まったような演奏は不健康な音楽です。または呼吸が乱れているために酸素不足に陥っています。リズム感やテンポ感が悪いということになるでしょう。
ではどのようにして潜在的なテンポを滞りなく流せばよいのか。音楽に於ける自立神経を活性化させるか。
先程も言いましたが頭でテンポを理解するだけでは不可能です。記憶することも難しいでしょう。テンポは記憶できません。これがテンポ感は音楽に於ける自立神経たる所以です。
それは身体のどこかで常にテンポを取ることを習慣化することです。これ以外にありません。
身体でテンポをとる習慣を身につければ、一歩離れた冷静な目で自分を見ることができ、緊張したときにも確実に落ち着きを取り戻すことができます。

次に具体的な方法を説明します。

続く