◎第七話
弓を保持することの難しさ

チェロの演奏に関してアマチュアの方がよく陥りやすい問題は、弓をいかに正しく保持するかということです。

弓はしっかり握ってゴシゴシ弾く、これが大抵のアマチュアが持っているチェロ演奏に対するイメージではないでしょうか。
『セロ弾きのゴーシュ』に出てくるゴーシュが弾く“印度の虎狩り”のイメージでしょうか。
それとも最近流行っている外国のチェロデュオグループの影響?

またオーケストラに参加している方は、どうしてもゴシゴシと力任せに弾くことを強要されることはあります。しかし本来芸術作品にはゴシゴシ弾くという要素などまったくありません。
これからチェロを習おうとする人はこれらのイメージは是非とも払拭していただきたいと思います。
はっきり言えることは、弓を保持する基本は本来、弓とは握ったり掴んだりして持つ物ではなく、“摘む”のです。摘んでぶら下げる、ということです。けっして握るのではありません。これはコントラバスのジャーマンボウ以外すべての弦楽器に共通です。
弓とは本来、空中にぶら下がっているものなのです。そして必要に応じて弦に下りてきます。
弓は肘を支えとして手首でぶら下げているのが理想です。これで楽器の音を潰さず楽器そのものが持つ理想的な響きを得ることができます。
支えである肘の角度を少し内側に回せばフォルテに、肘を支えに手首で弓を摘み上げればピアノに。コントロールは自由自在です。
弓を持つ右手首が下がるのは絶対良くありません。弓を掴み弦に押さえ付けるという悪癖に陥りやすくなります。
その意味で当教室ホームページ冒頭の二人並んでチェロを弾いている写真は明らかに間違っています。最悪の構え方です。(よくここまで反面教師的な酷い写真があったものだと感心しております!)念のため言っておきますが、これは私の写真ではありません。

その次に大切なことは、いかに弓の動きを邪魔しないで身を任せられるか、ということです。お寺の鐘をつく棒(何というのか知りませんが)を想像してください。自然に動いているでしょう?
紐で垂直にぶら下がっているからです。
あの紐をハの字になるように棒をぶら下げるとどうなるでしょうか?
棒は完全にロックされ動かなくなるはずです!
それと同じことが弓の動きにも当てはまります。指が開き過ぎると弓を掴んでしまい、弓の動きだけでなく指や手首のしなやかな動きまで止めてしまうのです。最終的には肩だけで弓を動かすということになってしまいます。
いかに弓を握らず掴まず保持出来るか。
弓のバランスの良し悪しにも影響されます。バランスの悪い弓だとどうしても掴んでもつという事態になることは否めません。ですから初歩の段階から弓だけでも良いものを持つuntitledことが重要になってきます。

練習としてイメージしやすいのは、左手で弦上に弓を支え右手を自然に開いて手首からぶら下げ弓に下ろしていく方法が最も理解しやすいと思います。トルトゥリエのメソード本にある写真やビルスマなど名人の写真はとても参考になります。

終わり