其ノ二
チェロの隠れた名曲

隠れた名曲とは言っても、特にバロック時代のチェロの作品では、知られている曲など、ほんの一握りに過ぎないのではないでしょうか。

古典派以降も余り知られていない名曲は無数にあります。
コンサートを賑わすのは、ほんの一握りの曲でしかありません。

先日、カール・ツェルニーが編曲した、彼の師匠ベートーベン作曲クロイツァー・ソナタのチェロ版の楽譜を手に入れました。こんな曲の存在、皆さんご存知でしたか?
ジムロックの初版をファクシミリにしたものです。
ベートーベンへのオマージュのような気持ちで編曲していったのではないでしょうか。
クロイツァーは私も好きな曲なので、是非そのうち演奏してみたいと思っています。隠れたチェロの重要なレパートリーです。
編曲として有名なチェロ曲としては、他にブラームスのバイオリンソナタ“雨の歌”をブラームス自身がチェロ用に編曲した物、これは最近大分広く弾かれるようになりました。他にはベートーベンが自分の弦楽三重奏第一番をチェロとピアノ用に編曲した物もあります。

他に知られていない曲としては、古典派ではフンメルのチェロソナタが大作です。

ロマン派以降もチェロの曲はたくさんあります。
私が弾いたことがある曲としては、もう十年以上も前になりますが、あるコンサートでヴォルフ・フェルラーリのチェロソナタを弾いたことがあります。皆さんこの曲はご存知ですか?
ヴォルフ・フェルラーリとは、間奏曲がとても有名なオペラ“マドンナの宝石”を書いたドイツ系イタリア人の作曲家の名前です。
オペラ作曲家が書いた曲ですが、曲としてはオペラのように大袈裟に歌いあげるような部分は全くなく、テーマを緻密に組み上げていく、ベートーベンが得意とした主題労作を目指しています。彼自身は純音楽に憧れを抱いていたそうですが、何となくそのことが理解できるような仕上がりになっています。
ピアノパートも、派手で巨匠的な部分はなく、あくまで控え目で、チェロとしっかり絡み合いながら曲は進行します。
特に第二楽章は、親しく語りかけるようで控え目なメロディーがとても印象的です。
全体的に室内楽的な雰囲気が貫かれています。全曲通しても15分ほどなので軽い曲として、もっと広く弾かれても良い作品ではないでしょうか。
そね他ヴォルフ・フェルラーリのチェロ音楽としてはチェロ協奏曲があります。この作品は演奏が非常に難しく、シャープが七ツもあります。
他にも知られていない作品はたくさんあります。思いつき次第紹介させていただきます。