◎ 今日は前回の続きとして、先日、ある私の生徒から引き取ったヘフナーのチェロについてお話し致します。

カール ヘフナーという名は弦楽器をされたことがある方なら一度は聞いたことがあると思います。ポール マッカートニーがビートルズで弾いていたバイオリン型エレキベースもカールヘフナー社製だったという話は有名ですね。
19世紀末、ドイツで興った世界最大の弦楽器メーカーです。

私も最初にチェロを始めた時の楽器も実はヘフナーのチェロでした。
昔は安い量産チェロといえばフランスのJ・T・L(ジェローム・チボーユ・ラミー)などがありましたが、やはり日本の鈴木とドイツのカール ヘフナーが最も馴染みの深いメーカーでした。、大量生産され世界中に広まっていたのはこの2社の製品ぐらいでしかなかったのではないかと思います。
他にも中国などの粗悪なチェロは売られてはいたのですが、品質の面から見るとヘフナーは最も安心できるブランドでした。音色はともかく、とにかく頑丈に作られていましたから。

今回、生徒から引き取ったヘフナー製チェロ(#4/3)を見てみますと、昔、私達が弾いていた物とは随分異なる事に気がつきました。造りもとても良くなりましたが、まず全体的に見て塗装がとても良くなっていることに気がつきます。
昔のヘフナーは湿度や強度の面からそうなったのでしょうか、とにかく塗装がとても厚くて硬く、ビニールかプラスチックのような物質でガチガチにコーティングされたような感じでした。こんな塗装をされているものですから音色は異様に暗くて鈍重、鼻にかかったような感じで、私にとってはとても我慢ならない奇怪な代物でしかありませんでした。しかし強度だけは抜群で爪で引っ掻いても傷ひとつ着かず、雨に濡れても平気の平左衛門!一度、バスのドアにソフトケースに入れたヘフナーのチェロを挟まれたことがありますが、この時も無傷でした(打ち所が良かっただけかも知れませんが…)。丈夫さ、これだけが取り柄のような楽器でした。しかし丈夫な事、これも大きな価値のひとつだと思いませんか?
特に子供用チェロに求められるのはまず第一に頑丈さだと思います。

今回のヘフナーを見てみますと、塗装はかなり改善されているようです。
昔の物に比べるととても薄く塗ってあります。
そのせいでしょうか、音色も随分と明るく、素直な音が出るようです。昔のヘフナーとは全く異なります。
楽器の造りそのものはさすがドイツ製品。堅牢そのもの。この点は昔と変わらないところです。
楽器としての状態もとても良く、7年も使ったとは思えないほど丁寧に使われております。よほど大切に扱われていたのでしょうね。あとは、もう少し弾き込んでやれば、かなり良くなるでしょう。

このチェロ、しばらくは我が家に滞在する予定です。レッスンで生徒が弾いたり、色々と活躍してくれることでしょう。
もし縁があれば、高価な楽器が買えない生徒に里子に出しても良いかとも考えておりますが、しばらくは私が大切に面倒をみようと思っています。
弾き込んでいる内に愛着が湧き手放せなくなるかも知れませんが。

終