◎ 以前にもお話ししたことがあると思うのですが、私のレッスンではクンマーのチェロ二重奏曲を常に使用しています。
特に初心者から中級のレベルに達した生徒に対しては、安定したテクニックを身につけることが期待できます。
作品の特色として、まず曲がとても美しく書かれていること、そしてとても良く響くように書かれているため二重奏ながら室内楽の楽しさが十分に味わえるということがあげられます。
いくら良く考えて書かれた教材でも面白くなければ使用する価値はありません。楽しさや面白さ、これは絶対の必要条件です。
チェロの技術では、室内楽を演奏する時はまずハーフポジション、1stポジションから4thポジションまで自由に使いこなすことができなければお話しになりません。バイオリンでは1stポジションだけででもなんとか弾ける曲はありますが、チェロではその可能性はかなり低いものになってしまいます。特にバロックから古典派の作品ではこの五つ(ハーフポジションを加えると)のポジションを弾き熟せることが必須条件です。クンマーではこれらのポジションが楽しみながら身につけることができるように作られているのです。また古典から初期ロマン派の作品を弾くために必要な全てのボウイングも勉強できます。

クンマーは私のレッスンではOP.105の二重奏曲から始めていますが、少し弾けるようになった生徒には、もっと難しいものをどんどん与えていきます。
さすがクンマーだけでは飽きるという場合はセバスティアン・リーやブレヴァルの二重奏曲を併用すれば良いでしょう。

私も以前はオッフェンバッハの二重奏曲を使っていたのですが、現在では少し遠ざかっています。オッフェンバッハの作品も簡単な物から難しい物までたくさんありますが、全体にいえることは、曲は一見単純でとても美しく書かれてはいるのですが、内容的にどれもかなり高度です。それは必要なポジションの選択がとても難しい場合があるということ。つまり音色の選択が微妙で、実際弾いてみるとなかなか響かず、音楽にするのは難しいのです(なかには超絶技巧の曲もあります)。またポジションの連結も微妙で指遣いがかなり困難な場合があります。つまりクンマーのように単純明快ではないのです。どちらかと言えば中間色を求めているというか、くすんだ音色が必要とされている面もあるので、初心者には理解が困難なこともあると思います。
フランス音楽特有の色彩感がそうさせるのでしょうね。
しかしこれらの作品も音色作りには欠かせない作品なので、これからどんどん取り入れていこうと思っています。

◎クンマー作品、楽譜の使い方

クンマー作品の作品の校訂者の数は多く(それだけ作品が有名で皆が使うということです)、同じ作品でも何種類も楽譜が出版されています。そして楽譜にはいろんな指遣いが書かれています。
なかには意味不明のものがあったり、例えばクレンゲル版のように同じ指でポジション移動することによってポルタメントを誘発させることを目的とした指番号が書かれている物もあります。
その演奏家の考えを理解するため参考にするのは良いのですが、生徒の考える力を奪いかねないので、私は指番号をそのまま弾くのはお勧めしません。

生徒が自分で考える習慣を養うためにも、指番号は修正ペンで消してから生徒に与えることをお奨めします。

終わり