◎ 今日はチェロが値段によって品質や音質がどのように変わっていくかを見てみましょう。
当教室の生徒達が持っている楽器は金額としては、だいたい50万から60万円程度という場合が多いようです。それに弓やケースを入れると70~80万円といったところでしょうか。中には百万円を超える物を持っていたり、二三十万円、又はそれ以下という方もいます。ネット通販で買うのでしょう。時々とんでもない楽器を持ってくる人もいます。

では20万円の楽器と30万円の楽器を音色や品質の面で比べてみればどうでしょう。この程度の楽器ではほとんど差はありません。音色も鼻が詰まったような鈍い音、見映えも張りぼて風。
この程度の楽器は調整もいい加減なことが多く(残念なことに楽器屋は安い楽器に手間をかけるのを嫌います)、特に糸巻きが不調だということが目立ちます。糸巻きの止まりが悪い楽器は演奏の意欲を減退させますので、注意が必要です。初心者には最高に調整された楽器を使って欲しいものです。どんな安い楽器にも最高の調整を施すのが良心ある技術者の姿だと思うのですが、残念ながら商売が優先されるのが現実のようです。
このクラスの楽器では弓を少しでもマシな物にすれば音色アップが期待できるでしょう。

チェロも40万円を超えてくれば少しはまともなものが手に入るかも知れません。
50~60万円ともなれば、量産品とはいえ調整次第では演奏には何の支障もないほどの品質のものが手に入ります。
例えばドイツの同じメーカーでも十万円程度の刻みでランク分けしてあることがありますが、この差は表面的な仕上げの程度の差によることがほとんどで、音色にはほとんど差がないと思ってよいと思います。ただ見映えが少しでも良いものを持つ方が練習も楽しいですよね。せいぜいその程度の差です。

ドイツの量産品では大体40万から90万円程で買えます。高くても安くても音色にはそんな大差はありません。(楽器屋は高い物を奨めるでしょうが。)ドイツ製の量産チェロを買うのなら50万円前後の物が無難ですね。

その次のランクとして百万円前後ということになります。
この程度の楽器となれば量産品の場合でも半手工となり見映えもとても良く、音質も長年の使用に堪えるほど飽きがこない物もあります。
2、30年位前まではこの程度の値段でもある程度古い楽器が買えたのですが、現在はオールドといえば最低150万ほど出さないと使い物になる物は手に入りません。楽器の値上がりには凄まじいものがあります。
安く買えるオールドはオールドとは言ってもほとんどが19世紀のドイツ製(チェコ、オーストリアを含む)です。このような時代の楽器はエフ字孔(サウンドホール)が下の方に開けられていることが多く、正しくネックの長さとのバランスがとれた位置に駒を立てると駒がエフ字孔の上の方に来てしまい、楽器の強度や響きを損なうことがあります。多分弦長を長くして弦の張力を上げようとしたのかも知れません。

この程度のランクを超えると変化は50万程度の刻みになるでしょう。あるいはもっとあやふやになるのかも知れません。値段は関係なくなってきます。自分が二百万でも安いと思えばそれは良い買い物だし、百五十万でも高いと思えば買わなければよいだけの話。要するに気に入るか入らないかの差です

最後にひとつだけ言えることは、楽器が持つ本来の音は弾き手にはわからないということ。迷ったり分からなければ必ず第三者に聴いてもらいましょう。

終わり