今回はチェロのボゥイング(弓遣い)についてのお話です。ボゥイングを文章だけで説明することは至難の業ですが、私のレッスンに対する考え方や様子を伝える機会にもなりますので、頑張って書いてみます。特に今回は、初心者の方の場合に焦点を当てて考えます。

まずお話を進める前に弓そのものについて少しお話しいたします。
アマチュアの方、特に初心者の皆さんは、どんな弓をお使いでしょうか。
重い弓、軽い弓、それとも中くらい?
重い弓はチェロで大体80グラム以上、軽い弓は80グラム以下、標準で80グラムです。
楽器との相性もありますが、若い人、特に男性は筋肉も沢山有るので少々重くても大丈夫です。実際私も二十歳代の頃は87グラムという超ヘビーな弓を使っておりました。重い分チェロが豊かに響くのです。重い分、ボゥイングのコントロールは幾分難しくなりますが、若い肉体には問題はありません。その弓は重いのですがバランスがとても良いので、それ程の重さは感じません。現在でもその弓は所有していますが、今弾くと、さすがに今の私には重く感じます。
現在は78グラムと80グラムの物を使い分けて弾いております。
女性の場合、軽目か、せいぜい80グラムほどでバランスの良い物を使えばいいと思います。しかし初心者向きの80グラム以下で良いバランスの良心的な弓は、なかなか手に入らず、どうしても高価な弓を買わざるを得なくなってしまうのが現状ですね。
一般的に、板の薄いオールド楽器には軽目、板の厚いモダンや新作の楽器には中くらいか少し重めの弓が良く合います。80グラム程の物なら、オールドでも新作の楽器にも良く合いますので、ある程度高価な弓を買われるのなら、初めからこれ位の重さの弓を入手されることをお勧めします。
弓のバランスですが、弓先が軽すぎたり根本が重過ぎるものは避けます。

次に弓の毛がいかに張られているか、これはとても重要な問題です。チェロを弾く人なら分かると思いますが、自分の爪が0・5ミリ伸びても気になるものですが、弓が手の延長である以上、全くそれと同じなのです。いつも同じ毛の量、質、長さでないと、とても違和感を感じるものです。
私の好みは、弓のフロッシュを一番端まで緩めた時、ほんの僅かに毛が張られた状態。
この状態で毛を適当な強さまで張ると親指の爪が弓本体にあまり触れずグリップとフロッシュに触れるのです。弓のバランスとはこの状態で弾いた時で判断するので、この状態はとても大切です。それより毛が長いと弓身に親指の爪が当たり摩滅させてしまいますし、弓全体のバランスが壊れてしまいます。正しい長さで毛をはればグリップは擦り減りますが、擦り減ることで弓を守っているのです。擦り減ったグリップは張り変えればいいだけの問題です。
いつもいかに弓を最良の状態に保てるかは、いかに良い楽器職人と出会えるかどうかで決まってしまいます。それ程弓の毛の張り方はチェリストにとって重要な問題なのです。ある意味、弓は楽器そのものよりデリケートだとも考えられるのです。

つづく