其ノ五
子供の場合

骨格や筋肉がまだ未成熟な子供に、いかにしっかりと弓を持たせるか、これも難しい問題です。弓を保持し構えることは、小さな子供にとって(大人でもそうですが)とても難しくデリケートな動作を伴うからです。しかし小学校四年五年生にもなれば、体も成長し、ほとんど問題もなくなります。
体格にもよりますが、レッスンでは大体六歳から八歳位まで、四分の一の楽器を使わせています。
チェロは、二分の一の楽器が無理なく弾けるような年齢から始めて十分だと思います。肉体的にも、チェロの演奏はバイオリンよりも困難を伴います。
そして何よりも、四分の一とか八分の一の楽器は、あまりにもチェロの音がしなさ過ぎます。音程もとりずらく、ピッチがすごく不安定です。最近品質の良い分数楽器が出回っているとはいえ、やはり弾き難さには変わりありません。

とても小さい子供がチェロを練習する場合、もし弓が腕の長さより長くて、弓の先まで使えない時は、弓が弦と直角に交わる限界の所にテープ等で目印を付け、それより先は使わせません。
子供には楽器も弓も、少し小さめか短め位が良いです。大き過ぎる楽器は構えるのも困難ですし、正しい音程もとり辛いので、子供のやる気を失わせることにもかねません。そのうち大きくなるのだから、と子供に大きめの楽器を買い与える親や、ひどい場合先生がいますが、それは間違いです。チェロに関しては大は小を兼ねないのです。
大人でも小柄な人は無理をしてまで、大きな楽器を弾く必要性など、ないのではないでしょうか。
小さな子供に弓を持たせるのは難しいため、私は弓のグリップの所に、柔らかい飴ゴムのホースを短く切ってはめ込んで弾かせています。飴ゴムのホースは東急ハンズの素材コーナーで、計り売りで売っています。ゴムを付けると弓の根元が太くなるので、親指の負担も少なくなり、より早く弓の安定感を向上させるのに役に立ちます。
弓を持つ事に慣れてくれば外します。外した結果、まだ不安定だと判断すれば、また取り付けます。

つづく