◎ どんな弦を使うか?

以前にもチェロの弦についてお話ししたことがあるのですが、今回も再び弦について考えてみたいと思います。

私が今現在使用している弦はA線とD線はヤーガーのミディアム、G線とC線はスピロコアのミディアムです。プロのチェロ奏者として活動し始めて40年近く、その間ほぼ一貫してこの組み合わせで弾いています。
こう長く使い続けると、この組み合わせが醸し出す音だけが自分の中でのチェロの音として認識する習慣が身についてしまいます。この組み合わせが自分にとってはチェロの音色の基準にもなっているのです。
過去には評判を聞いたり人からの薦めなどで色々な弦を使いましたが、どれを使ってもどうも気持ちが落ち着かない、又は違和感を感じるのです。しばらく続けて使ってもやはり飽きが来ます。
違う弦を張るとまず楽器が思うように反応してくれない。
それはなぜかと考えてみると、まず楽器は弦のことを良く記憶します。楽器が弦を選ぶとでも言えばよいでしょうか。
それに最近色々な弦が発売されていますが、どの弦も個性が強すぎると思うのです(個性がないと売れませんから)。個性のない素直な音色の楽器に張ると弦の個性だけが目立ってしまうことも多々あります。結局、楽器の個性と弦の個性がぶつかり合い、結局どっちつかずの音になってしまうことが多いのです。そういう訳で個性が強すぎる弦は飽きるのだと思います。
私が感ずるところ、ヤーガーのA、DやスピロコアG、Cの音色はとてもオーソドックスで楽器の個性を殺しません。ですから個性の強い楽器にも馴染みやすいのです。

どんな楽器にも良く合うので楽器店に陳列される楽器にこの組み合わせの弦がよく張られているのを見ても納得できます。

最近ヤーガーではスペシャルとスペリオールという弦も売り出されましたがとても良いと思います。スペシャルは従来のヤーガーに比べるとしなやかさが増したように思いますし、スペリオールは輝きが増したようにも感じます。私もそれら高音の2弦は時々使っています。スピロコアの低音2弦はタングステン巻きの物を使っていたこともあります。普通の物に比べると細くてしなやか、張りも強くなり音量も出ますが、その分金属的な音になるので今は使っていません。

色々な弦を取っ替え引っ替え張り替えている方も自分の楽器本来の音を知るために基準となる弦を決めておくことが重要だと思います。同じ種類の弦を張り続ける方が楽器の状態も安定するはずです。

終わり