◎其ノ四
弓を選ぶ  続き

では実際に弓はいくら位で買えるのでしょうか。
最近、弓の材料として最適な材木(ペルナンブコ)が少なくなった結果、新作の弓でもどんどん値上がりしているのが現状です。また弓は折れたりする事故が楽器に比べて多く(折れた弓は修理しても価値は無くなります)、古くて良い弓は常に少なくなる傾向にあり、現在特にフランスのマスターピースの値上がり方には凄まじいものを感じます。

弓にも楽器と同じように大きく分けて、古い厳選された材料で手作りされるマスターピースと大量生産される普及品とがあります。
マスターピースではやはりフランスのオールド弓が最高ですが、最近最高品質の材料を手に入れるのはとても困難になりつつあり、人気ということもあり良いフランス製の新作マスターピースでも手に入れるのはますます困難になりつつあります。中にはサルトリー(フランスの名工)が遺した最高の材料を引き継いで弓を作っている職人もいますが、このクラスの弓になりますと最低でも150万円ほどの値がつきます。
大量生産される弓は以前はドイツが主な生産地でしたが、最近はドイツ製でも性能の割には値段が高い弓が多くなりました。
最近はブラジルでフランスの職人の監修の元で作られている弓が内容的にも素晴らしく、値段も安いのでとても助かります。このクラスなら10万円前後から買えるはずです。またフランスのリヨンで作られている量産品の安い弓も品質が良く、初心者にはお勧めできます。ブラジル製と同じような値段で買えるのではないでしょうか。
それ以下の値段になると、かなり性能が落ち、選ぶ範囲が狭くなり苦労します。

同じメーカーの弓でも重さや固さなどいろいろな条件により弾き心地は全く異なるので、経験豊かな方に楽器との相性も考慮に入れて選んでいただきましょう。
具体的な選び方として、まず全体的に軽すぎる物や重過ぎる物は避けます。また、先が重過ぎる物や根元が重過ぎる弓は良くありません。これらの弓はコントロールが取りにくく小回りが利きません。バランスの良い弓は持った感じ、弓元から先まで一本芯が通ったような感じがするもので、少々重くても軽く感じます。

◎カーボンファイバー弓

安い掘り出し物を苦労して見つけるのなら、いっそのことカーボンファイバー製弓も選択の可能性として考えても良いのではないでしょうか。どんな楽器に対しても何の問題もなく使えます。
最大の特長は何と言ってもその強靭さでしょう。少々のことで傷ひとつ付きません。楽器や弓を酷使するプロのオーケストラプレイヤーにとっては救世主です。
次にその安さです。10万円以下の木製の弓を買うのならカーボン製の方が良いということも十分有り得ます。私もヤマハ製カーボン弓は一本所有していますが、気に入って使っています。
ただカーボン弓は張りが強いので弓の毛が早く伸びきる傾向があるので注意が必要です。
良質の天然素材が得られ難くなるであろう近い将来、カーボンファイバー弓は弓の主流になるのかも知れませんね。