◎年齢について 1

楽器を習ってみたい、とおっしゃる方のなかには、こんな歳で習い始めても、、はたして弾けるようになるのかしら、楽譜も読めないし、と不安に思っておられる方は結構多いものです。たいてい60歳も超えた方に多いのですが、そのような方に私はいつも、“心配御無用”とお答え申し上げております。人間は精神的には幾つになっても、死ぬまで成長出来るものです。若いことが素晴らしく、若さのみに価値があるという日本の社会的な風潮、特に音楽界の若年齢至上主義の日本人の感覚に私はいつも疑問に思っています。カワイコちゃんばかりもてはやされるのには辟易させられてしまう。
人間、若いことは勿論それだけで素晴らしいことではあるのですが、若いことだけが素晴らしいのではなく、何歳であろうと“人間として生まれいろいろな事を経験してきたこと、その事実そのものが素晴らしい”、と考え直すべきではないでしょうか。また、若いことだけでチヤホヤされる。こんなの変だとは思いませんか?またこの考え方が日本の音楽をやる人の年齢層及び考え方を狭くし、偏らせる原因ともなっているのだと思えてしかたがないのです。私など年をとった分、経験も豊富で音楽をやっても、より深く音楽を理解し楽しむことが出来るのはずではないかとすら思うのですが、いかがでしょうか?

勿論プロを目指す、そんな人はある程度若い年齢から始める方が有利だとも考えられますが、なかには一般企業に勤めたものの音楽への思いが絶ちがたくプロに転向する人や音大に入り直すも人も少なからずいます。このような方は偉いと思います。それには相当な苦労と努力が必要でしょう。これは各自の価値観や音楽への思いによる差、としか言いようがありません。やろうと思えば年齢なんて関係ありません。また歳にこだわり、ささやかな楽しみを諦めるなんて残念なことですね。そのような人は結局音楽を内面的ではなく表面的にしか捉えられていないからではないでしょうか。リズム感もないし音痴の私なんかに楽器など出来る“はずが”ない、または年甲斐もなく、などと先入観や世間体を考え過ぎているのかも知れませんね。何度も言いますが、“心配御無用”なのです。