其ノ二

初心者のチューニング、特に子供の場合はもっと深刻です。
5歳や6歳の小さい子供が自分でチェロをチューニングをする、これはほぼ不可能に近いでしょう。
 
この場合、家庭でも正しい音程で練習が出来るように、親にはしっかりとチューニングの方法を教えます。
レッスンでは生徒に、正確にチューニング出来た先生のチェロやピアノなどを使って、解放弦での生徒と先生との間に生じた音のズレを感じさせます。
最初はわざと生徒のチェロの音をずらして、生徒にはその音が先生のチェロに比べて高いか低いかを当てさせてもいいでしょう。それで正しいピッチに近づけて耳を訓練していくのです。
少しずつ根気よく続けていけば、子供も次第に音の違いに気が付いていくはずです。

また、こんなことがよくあります。
極端に音がズレていれば聞き取りやすいのですが、正しいピッチに近づいてくると大人でもなかなか判断がつきにくいものです。特に8分の1とか4分の1のチェロではピッチがとても不安定、というか、ピッチ感がありません。A線など高い音の弦ならまだましなのですが、C線になると、強く弾くと高く、弱く弾くと低くなるので、どれが合っている音なのか、ほんとに大人でも分からなくなります。チューナーで合わせても、メーターの針がなかなか止まりません。
そんな時はフラジョレットでオクターブ高い音で合わせると、少し聞きやすくなるので楽に合わせることができます。この方法も、親が家で毎日やるのはかなり困難です。その意味からも、子供が全く初歩の時期は頻繁にレッスンを行ったほうが良いと思います。
狂ったチューニングで練習しても無意味だからです。

しばらく前からアメリカのイーストマンという楽器メーカーから出ている分数チェロ(製造は中国)は、子供用チェロ特有の問題であるチューニングの困難さを軽減してくれました。すこし値段は高いのですが、分数楽器でもかなりピッチが安定しています。
いずれにせよ子供用楽器、8分の1や4分の1のチューニングだけでなく、全てにおいて先生はもちろん親の根気と努力が不可欠と言えます。

子供も2分の1の楽器が弾ける程に成長すれば、チューニングに関しては何の問題も無くなるでしょう。音色も大人の楽器に近づくのでピッチも安定しますから聞き取りやすく、自分で十分できるようになります。
これくらいの楽器が弾ける年齢になれば全てが安心です。
私個人としては2分の1からチェロを始めても全然遅くはないと思います。

つづく