現代ではこの5弦用に書かれた6番を4弦のチェロで弾くことがほとんどですが、そこには当然のことながら演奏に無理が生じます。E線でしか出せない音質やキャラクターを他の弦で代行させる訳ですから無理があって当然です。
E線の音を4弦チェロの他の弦で代行させる場合、当然ポジションが高くなってしまい異常なポジションの乱高下が頻繁に起こります。その結果、要らない緊張感やこの曲が持つ優雅な雰囲気にそぐわないある種の“迫力”が生じてしまうのです。またどうしても弾けない和音が度々出てきます。厳密に言うと4弦チェロでは6番は演奏不可能ということになるのです。しかし何とかして弾いてみたい、そこが人情です。

そこである人は考えました。音域を5度下げてト長調で弾くのです。その版かジムロック社から出ています。しかし5度音を下げることによってかなりテンション自体は下がりますが、やはり4弦の楽器で弾くことによる演奏の困難さに変わりはありませんし、弾けない音が出てくるのに変わりはないのです。
ニ長調だからあの華麗さ優雅さがあるのです。ト長調では変に間延びした感じや“ふやけた”感じが強調されてしまうような気がします。

私がやっている方法なのですが、それは小さいチェロを使うことです。5年前、出会いがあり8分の7の古い楽器を購入しました。これは18世紀後半に作られたものですが、とても枯れた美しい音がします。この楽器にガット弦を張り、ピッチをA=415HZ.まで下げると、かなり“それらしい音”になります。半音も下げなくても普通のピッチでもいいかも知れませんが。
この楽器でバッハ以外にもボッケリーニのソナタなど弾くとほんとに楽しい!バロック時代のチェロのソロ曲に対する考え方が根底から覆されるような気がしました。