5弦チェロ

第6番は元々5弦のヴィオロンチェロピッコロのために書かれた曲ということになっています。しかし楽譜には5弦の楽器としか指定がないので、どの楽器を指すのかは実際には不明なのです。5弦の楽器では他に肩から紐で首からぶら下げ胸に当てて演奏する、ヴィオロンチェロ・ダ・スパラという楽器も存在しました(復元された楽器でバッハの組曲もレコーディングされています)。胸に当てて弾くためとても小さいチェロです。5弦のチェロとは普通のチェロのA線の外側にもう一本E線がある楽器のことでバロックの時代にはソロ用楽器として用いられました。浜松の楽器博物館に展示されているゴフリラーのヴィオロンチェロピッコロはとても小さいですが、あれはひょっとして肩からぶら下げて弾いていた楽器かも知れません。
昔のチェロ弾きはソロの時は小さい楽器で、オーケストラや伴奏を弾く時は大きな楽器で、と用途に応じて使う楽器を器用に使い分けておりました。どんな楽器にせよ、昔の奏者は現代の奏者に比べてもっと融通がきいたのです。現代我々が使っているのはバロック時代でいう中型の楽器で、その中型のチェロにこだわって使用するようになったのはそんなに古いことではないのです。大雑把に大中小と申しましたが大きさはほんとに色々で、ヴィーンの楽器博物館ではそれこそコントラバスに近い物も展示されています。
この曲から見てもバロック時代の作曲家は弦の響きや個性にこだわっていたことがよく理解できます。