◎ 第10番
アレグロ デチーゾ(はっきり決然と)

4分の4拍子、ロ短調。全編16分音符の連続です。ボウイングは一つのスラーとアップ(上げ弓)が2回繰り返されます。つまりタータタのように。この音形からみてもアレグロとはありますが、あまり速過ぎる必要はないと思います。デチーゾですので当然、しっかり楽器を鳴らしながら決然と前に進むのが良いでしょう。
この曲でのテクニック的に難しい点は、低いポジションでの親指の出番が多いということ。小指を伴う親指のポジションも頻繁に登場します。
曲はロ短調という厳しい響きの調で書かれていますが、出てくる音はなぜか穏やかで、どこかのんびりしています。作曲家の人柄の表れなのでしょうか。

◎ 第11番
ト長調、4分の4拍子、アダージョ・アレグロ

堂々としたチェロのコラールで始まります。3音によるダブルストップですが、弾き方としては、はっきり2音ずつには分けず、オルガンのアルペジオのような響きが出せれば最高だと思います。

短いコラールは一旦フェルマータで止まり、アレグロに入ります。8分音符による伴奏に乗ってメロディーが歌います。 なんて美しいメロディーでしょう!オペラのアリアを聞いているようです。
だんだん音楽は盛り上がっていき、やがて良く響くG線の開放弦も加わりクライマックスを築きます!

しかし、2本の弦でメロディーと伴奏を引き分けることのなんと難しいこと!
もしもこの曲のメロディーが美しくなければ、きっと挫折してしまうでしょう。

◎ 第12番
アレグレット カプリッチョーゾ(気まぐれに)

やっと終曲にたどり着きました!
この曲は12曲中、最もカプリースという雰囲気が強く、跳ね回るような楽しい曲です。そして終曲に相応しい華やかさがあります。チェロでこのような雰囲気を醸し出すのは至難の業でもあります。

重音、アップボウでのピケタート(いくつかの音を1弓で鋭く止めながら弾く奏法)、フラジョレット、5度による人工ハーモニクス(フルートのような響きがします)など、派手なテクニックが次から次へと登場します。
常に楽しく、華やかに曲は終わります。

さて、12曲、見てきましたが、とても変化に富んだ曲集だということが分かっていただけたと思います。
この曲集は高度なテクニックを習得するためには、チェリストにとって欠かせない曲の一つでもあるのです。
バッハの無伴奏チェロ組曲のような深みは無いかも知れませんが、気軽な無伴奏チェロの名曲として、もっとコンサートで弾かれれば良いのでは、と思っています。

終わり