◎ 皆さん、チェロを弾く時、特にオーケストラで弾く時など、気がつけば興奮して弓を必死で握りしめ、弓の中程より下でゴシゴシ弾いていることなどありませんか?。
やはりチェロでは弓を体幹から近い所で保持した方が無意識だとしても腕が安定しますし(腕の重さを乗せやすい)精神的にも落ち着くからだと思います。因みにバイオリンでは弓先の方が弓は安定します。

でも頑張って弾いた割には音色は固くて汚いだけ。そんなことはありませんか?
ここでまず気をつけないといけないことは周囲の音で自分の音が汚いかどうかなどわからなくなってしまうことです。まずどんな時でも冷静に自分の音を聴く努力をしましょう!
音が汚い状態になる傾向として、弓を根元(下半分又は下四分の一)で弾く時、右手の各指が突っ張ってしまうことが多いので、そんな時、音色も固くなっているということが多いのです。
皆さんが気安く行う弓元での演奏、それは意外と難しいものなのです。

なにも考えずに弓の根元で弾くと、音色的にも耳障りで意味のないアクセントがつきやすく、指弓(指の関節や手首から先だけで弓を動かそうとする動作)を多用する習慣にもなりやすいので気をつけなければなりません。反対に肩から先の関節を強張らせロボットのように弾いてしまう習慣にも陥りやすいものです。どちらにせよ音色は最悪です。

どんなに弾ける人でも、弓元での肩から先のしなやかさ、ことに手首から先のしなやかさは日々チェックしていないとだめだと思います。身体は日々変化し続けるものだからです。

右肩から指先までをしなやかにさせるためにはとても有効な曲集があるのをご存知ですか?
それはフランコムのカプリース OP.7です。
特にボウイングのしなやかさのためには第11番を練習することが効果的です。

曲はModeratoと書かれてはいますが初めはゆっくりなテンポで練習します。弓が根元や先にきた時に移弦するように書かれていますがこの時、手首や指が強張っていると非常に弾き辛いはずです。特に小指が突っ張っている特にはこの曲は弾けません。
肩から先がしなやかになってくれば次第に速度を上げていきます。メトロノームで四分音符が85程度で移弦がスムーズに行われるようになれば肩から先はしなやかになったということです。さらに自分の限界までテンポを上げて練習すれば良いでしょう。しかし最初から無理に速く弾こうとし過ぎると、反対に身体が強張りますので気をつけて!

弓の根元でのしなやかさや根元での小回り良さを身につけるためには、この曲は最適だと思います。

第8番や12番も良いですね。小回りの良さを身につけるためには最高のエチュードになります。

尚、この曲集の最大の良さはハーモニーの進行がとても美しく、弾いていて飽きが来ないということです。フランコム。さすがにショパンが最も敬愛したチェロ奏者というだけのことはあります。
この曲集を練習すればボウイングだけの機械的な練習、例えばフィヤールやセブシークなどのエチュードをする意味など一切なくなってしまいます。

因みにショパンは彼のために素晴らしいチェロソナタを書きました。これは彼が書いた最高の室内楽作品というだけでなく、ブラームスのチェロソナタと並ぶ、ロマン派最高のチェロソナタでもあります。これがショパン最後の作品となりました。

終わり