◎ これは言わずと知れたチャップリンの名画ですが、あらためてチャップリンの芸能人としての凄さや奥深さを感じさせる名画中の名画だと思います。これは芸能というよりもはや偉大なる芸術の領域でしょう。
最近、あらためてDVDをみたのですが、とにかく感動しました。
白黒映画ではあるのに色彩を感じさせられます。むしろこれくらい純度の高い作品になるとかえって色が邪魔になるのではないでしょうか。これはチャップリンの他の作品にも当てはまるでしょう。
小津安次郎や黒澤明などの作品にも共通したものがありますね。

ストーリーはあるバレリーナと歳老いたコメディアンの恋のお話しです。
老コメディアンによって助けられた自殺未遂の若いバレリーナが彼の力で立ち直り、遂には栄光を勝ち取る半面、コメディアンは過去の栄光にこだわりながらも周りからは次第に忘れられていき、命を懸けた最後の舞台で名演を残すものの心臓の発作で倒れ、共演者のバレリーナの踊りを見ながら死んでいくという悲しくも美しいお話。
老コメディアンの悲哀がひしひしと伝わります。これは演奏家にも通じることで、つい私も自分に置き換えて見てしまいました。

それにしてもバレリーナ役のクレア・ブルームという女優、なんて清楚で綺麗なのでしょう!演技はともかく(個人的には余り上手いとは思いませんが)、そこにいるだけでその場面がぱっと明るくなる、これこそ女優のオーラというものなのでしょう。

音楽も美しい!
チャップリンの音楽とバレーとが見事にマッチングしています。
ところで、コメディアンのカルヴェロ、つまりチャップリンが劇中でバイオリンを弾くシーンが何度も出て来るのですが、彼はバイオリンを左右反対に弾いているのです。つまり左手で弓を持ち右手で弦を押さえているのです。この方が高音弦を気持ちを入れ込んで弾くには都合が良いのでしょうかね?バイオリンをデュエットするシーンなど見ていると本当に面白い!弦楽器の事を知らない人が見ると意外と気がつかないかも知れませんね。

チャップリンはチェロも上手に弾いたそうですが、チェロもやはり左右逆で弾いていたそうですよ!
彼はチェロの曲も作曲していて楽譜も出版されています。そのうち弾いてみたいものです。
映画最後に出て来る
バスター・キートンとチャップリンによるピアノとバイオリンのデュエット、あれは鳥肌物ですよ!瞬きする暇もない。凄い!の一言。一見爆笑シーンですが、そこには磨きぬかれた演技と天性のセンスが光り輝く見事なシーン。天才を見る瞬間です。

彼の演技を見、歌を聞いていると聞いていてもそこにはいつも真の芸術を感じます。
彼は録音の時、演奏者に言っていたそうです『音の無いところにこそ音楽はあるんだよ』と。

終わり