◎其ノ三
レッスンの段階

さて、体験レッスンを経て生徒が私の教室に入会しますと、日時を決め、まず第一回目のレッスンが始まることになります。
余談ですが、当教室では、レッスンの日時は生徒と教師との話し合いで、その都度、お互い都合の良い日を決めております。

第一回目のレッスンでは、全くの初心者の場合は楽器の構え方、弓の持ち方から始めます。まあこれは普通でしょう。しかしこれは生徒の身長や座高、腕や脚の長さなどから考えるととても難しい問題です。たかが二三回のレッスンで安定した構え方に到達するは到底無理で、何回にも分けて模索します。将来、必ずいろいろな問題が生じてくるので、その都度、修正し考えなければなりません。
一回教えたことは二度と教えない、という先生もいるかも知れませんが、音楽ではそれは通用しません。
私は何度も行きつ戻りつしながらレッスンを進めます。これは余談ですが、よくピアノなどのレッスンで一曲上がれば赤鉛筆で丸を書いたりする先生がいますが、あれは私には抵抗があります。生徒はうれしいのかも知れませんが、丸など書かれると、大抵は二度とその曲はやりませんからね。
まあこれはどうでもいい話ですが。

さて経験者の場合は、それまでやってきたこと(たとえ独学の場合でも)を活かし、どう考えても不都合な部分は修正していきます。
大概の先生は生徒がそれまでやってきたことを徹底的に否定するものです。無理やり自分のカラーに染め上げてしまう。言うならば前に習った先生の人格まで否定しているようなものです。それを気持ちが良いと感じる生徒はいるでしょうか?
私は生徒がそれまでやってきたことは絶対否定してはいけないと思っています。
それまで築き上げてきたものを利用しつつ、改良した方が良ければ改良を加え、さらに新しいものを身に付けていくのです。その方が生徒もいろんなな発想をすることが可能だし、その能力を育てることにもなりますから、より効率良く上達できると考えます。家を立て替えるのではなくリフォームするように。
大切なのは最初の数回のレッスンで、その生徒の個性を探り、将来の大まかな計画を立てていくこと、これはとても難しく、日々悩むところです。
そのために私は各生徒にカルテのようなものを作って保管しています。それにはそれまでレッスンでやったことや問題点、さらに計画など書き込んで行きます。

つづく