長年、レッスンをしていて生徒を見ていますと、なかなか上手く弾けない(それは練習の質の悪さにもよるのですが)、と焦ったり、簡単に自分は下手だ、才能がないなどと決めつけ、自信をなくしてしまっている方を結構多く見かけるものです。
そんな方々を見ていると大抵は、気持ちばかり先に行ってしまっていたり、世間一般的なレベルから見ると自分の演奏程度はどうか、などと周りと比べたがる傾向があります。だから、他の人と何か違うと、自分が下手だと単純に思い込んで自信をなくしてしまうのです。短気なのかもしれませんね。

周囲を気にしたり、先のことを見渡す習慣、これは音楽、特にアンサンブルにとってはとても重要なことではありますが、もっと最初にやるべき根元的な考え方として、次の音にスムーズに移るにはどうすれば良いか、とにかく目の前に提示されたことをきっちり解決してから先に進むという習慣、これの方がもっと大切なのです。これはかなり上達した方やプロの方にも共通したことだと思います。

百歩の道も一歩から。

どんな芸術的大作でも、最初の第1音から始まります。まず、いかに美しく2音目に移るか、いかに適切に移動するかを考えましょう。

一針ひと針、針を進めていく刺繍にも似ています。縫い目を飛ばすことは失敗を意味します。

着実に針を進めるにつれて全体像も見えてくる、というようなものです。こう考えると、音楽におて多少の才能など有っても無くてもどうでもよい、と思いませんか?要り余る才能があったとしても、細かいことに無頓着なら、その才能は活かされないでしょう。細かいことを着実にできる、というのも立派な才能なかもしれませんね。

1音1音、丁寧に次の音に渡していく、細かい、ほんとに細かい努力の積み重ねが、(自分が納得できる)名演となるのではないでしょうか。

もう一度言います。

「百歩の道も一歩から。」