◎ 乾燥

ご機嫌よう!
あなたのチェロの調子はいかがですか?

この季節、空気がとても乾燥し、楽器も乾いた音色で美しく響いているのではないでしょうか。
梅雨の時期にはあまり鳴らない楽器もこの時とばかりに鳴りますね。
この乾燥期に思う存分、楽器を弾き込んでおきましょう。

しかし、乾燥し過ぎにはくれぐれもご注意を!
楽器に対して多湿には敏感な人が多い半面、乾燥し過ぎに対しては意外にも鈍感というか無頓着な人が多いとは思いませんか?

一般的に弦楽器にとって最高に良い湿度は、大体45%前後だといわれていますが、これが35%も切れば、楽器の音も鋭さが増したり、ざらついてきたりします。そのような音色になってくれば大抵乾燥し過ぎの状態です。
さらにこの季節にはどうしてもエアコンの暖房を使うことが多いと思いますが、実はエアコン暖房の風は弦楽器にとっては最悪。乾燥し過ぎるのです。
乾燥のし過ぎは楽器を痛めます。思わぬ所が剥がれ雑音が発生したり、最悪の場合は割れが生じたりします。

どうしようもなくエアコンを使う場合、少なくても楽器には直接風が当たらないようにしましょう。理想的には濡れタオルを干したり、加湿器を使うようにしたいものですね。

ところで私のレッスン室には小さなヒーターがひとつあるだけです。楽器の事を考えると怖くてエアコン暖房など使えません。またチェロを弾いていると身体が熱くなるので冬はこれだけでも十分暖かいのです。でも生徒の皆さん、夏季にはエアコンで冷房しますのでご安心くださいませ。

冬季の乾燥のことを考えれば例えば、ホールは大抵酷く乾燥してますね?そんな環境で演奏する時にはダンピットをこまめに使用しましょう。これは楽器の中にぶら下げて使う加湿器で、急激な湿度の変化に備えるためには全季節で使えます。

人も乾燥し過ぎたりすると喉を痛め風邪をひいたりしますよね?チェロも全く同じだと思います。人が心地好い環境は楽器にとっても心地が好いのです。

◎ 楽器を弾き込む

楽器が良く鳴るはずのこの季節、自分のチェロは十分に鳴らなくて悩んでいる方も多いことだと思います。この季節は普段あまり鳴らない楽器でも鳴るのですが、それでも鳴らなくて困っている方も多いかと思います。
そんな時は工夫次第でかなり改善されます。まずチェロの隅々まで鳴らすように心掛けましょう。では、どうすればよいのか?
例えばタングステンなどの比重の重いエンドピンを使えば音の芯がしっかりしてまろやかな音が出ますが、これはある意味楽器の響きを止めているから起こることでもあるのです。
低音がよく響くようになる(あるいは響くような気がする)ので、楽器全体が良くなったような気分になりますが、私は一種の錯覚だと思います。
本当に楽器の隅々まで鳴らすためには軽いエンドピンを使うべきです。例えばカーボンファイバーのエンドピンを使ってみてください。楽器が隅々まで響いているのが実感できるでしょう。それで楽器が響きに慣れてくれば音質を調整するために重い物に変えていけば良いのではないかと思います。最近は色々な金属を組み合わせたハイブリッドエンドピンが多数出回っていますので、音色の選択肢は以前に比べて広くなりました。
鳴り方は弦によっても変化します。
低音域が鳴らない場合、C線G線をヤーガーのような単芯の弦ではなくスピロコアのようなロープコアのものにすると改善され、A線やD線も開放的な音になります。

技術面で考えると、しっかり楽器を鳴らせない人はいつも大抵指板の上で弾いているものです。これでは楽器も鳴ってきません。
もう少し駒寄りで弾くよう心掛けてください。これには弓がしっかり持てていなければなりません。適当に持っていると、楽器に負けていつも指板の上で弾くという悪癖に陥ります。

もうひとつ、鳴らない楽器はフラジォレットが鳴りにくい、音が抜けないということが多いものです。
二分の一、三分の一、四分の一の位置の順でフラジォレットをしっかり鳴るようにしていきましょう。この時、弓はできるだけ駒の近くで。

楽器から教わることはたくさんあります。
演奏家が音楽を作ることは楽器との共同作業です。自分の身体をいたわるように愛情を注いでやると、きっと楽器の方から素晴らしいメッセージが届くはずです。