◎其ノ二
左手の練習

今日は特に初心者が陥りやすい左手の問題について考えてみます。まず指の形について、どんな指の状態の時、各指の俊敏さが活かされ、またしっかりと音程を把握できるのでしょうか。
チェロにとって自然な形とは、普段何気なくリラックスしている時の手の形でしかありません。
リラックスしている時、私達の指はどのような状態でしょうか。どの指も軽く曲げられ、決して突っ張ってはいないはずです。
基本的にそのような気分で構えることができれば最高です。あとは各指の長さが異なるため、少し手を加えるだけで良いのです。
その点、チェロはバイオリンに比べて遥かに自然な形で構えることができるので、その特性を活かすべきです。なかには無理矢理難しく構えようとしている人も見かけます。
また力ずくで指の筋肉を鍛えようとしたり、背筋や胸筋、腕の筋肉を鍛えたり…もうスポーツをやりたいのか音楽をやろうとしているのか訳がわからない人も見かけます。なかには運動器具(ダンベル、ハンドグリッパー、指を開くギプスなど)まで使う人もいます。身体に苦痛を与えて何かを得ようとする、日本人てそういうの大好きですよね。
結果としてそのようなチェロ演奏には関係ない筋肉をいくら鍛えても、身体に苦痛を与えても演奏の上達には全く効果がありません。ナンセンス、コーミッシュです。
そういった無駄な努力や時間は、もっと音楽や芸術を考える時間に当てましょう!

弦をしっかり押さえなければならない、これは確かに大切なことではありますが、むやみに押さえようとするのは良くありません、かえって指を痛めたりぎこちない手の動きになってしまうからです。結果的に指の筋力増強や俊敏さを増すことには全くつながりません。
私も初めてチェロを習った頃は、とにかく指は弦をハンマーで叩くように叩いて押さえろ!と先生から強要されたものです。指を痛め、指先からは血が流れ、爪は剥がれそうになりながら、苦痛の日々でした。しかしそれが音楽にどう関係があるのかは今から考えても甚だ不明です。

続く