◎其ノ三
続、左手の練習

次に実際チェロを左手に構えてみますが、その時も各指は軽く丸く弦に乗せます。親指も丸く、平らに突っ張ってはいけません。親指が突っ張ってしまうと他の指とでネックを握ってしまうことになり、手首が硬くなってしまいますし、指の運動を阻害し、ポジションの移動のみならずヴィブラートの可能性も制限されてしまいまうことになります。親指だけでなく、ひとつの指の突っ張りは他の指の動きを阻害します。指はお互い連動しているのです。
1から4の指はフックとかハンガーで指板にぶら下がっているような状態です。親指は軽く添えます。

1から3の指の第1関節や第2関節が下がってしまう人(いわゆる“さば折”とか“蝮指”)が初心者に多く見られますが、このような指は正しく腕の重みが弦上に乗りにくいので指の運動性も阻害され、音色も変化に乏しく、ヴィブラートをかける段階で早くもテクニック発達の限界が訪れます。出来るだけ早い段階での修正が急がれます。こんな場合、いくら無理をして指の形を整えようとしても効果は全く見られません。大抵強い力で弦を叩いて押さえ、形を作ろうとしています。
人間の身体は弱い力を利用した場合のみ、有効に力が発揮できる理想的な体型に形作られます。
こんな時は出来るだけ弦は叩かず、正しい形で“ゆっくり”弦を押さえるようにします。または、指板を深く押さえるような気持ちで押さえると上手くいきます。叩いたりして無理に弦を押さえつけようとすると、どうしても浅い力になりがちになり関節のしなやかさや強さは養われません。
それでもなかなか関節が不安定な場合は、弦と指板との間が本人にとってはまだ広すぎる、ということも考えられます。
その時は躊躇せずに楽器店で駒を低めにしてもらってください。
指の力が付けば元の駒に戻しましょう。

続く