◎ 初見演奏ってご存知ですか?
楽器演奏を何年もやっている方はご存知だと思いますが、内容としては突然渡された楽譜をその場ですぐに演奏することをそう呼びます。
これはプロの演奏家にとっては欠くことのできない能力のひとつですし音楽を楽しむ全ての人にとってとても大切な能力です。音楽大学ではソルフェージュ(音楽の基礎訓練のことで初見演奏の他に聴いた演奏をその場で五線紙に書き取るいわゆる聴音も含まれる)のひとつとして特訓を受けます。

なぜ音楽家にはこの能力が必要なのか?
まずオーケストラプレイヤーの仕事で考えると、プロオーケストラは次々と仕事をこなさなければならず、アマチュアのように1曲を1年もかけて練習しているようでは全然間に合わないのです。
たった一回か二回のリハーサルでひとつの演奏会をでっちあげなければなりません。場合によれば演奏会当日に楽譜を渡されることもざらにあります。そんな条件の下、細かい所や難しい箇所は誤魔化してでもその曲の雰囲気を瞬時に汲み取り、演奏できるような能力がなければオーケストラプレイヤーはとても勤まりません。
ピアニストの場合でも、歌の伴奏をするときなど歌手はその日の体調によっては半音下げて歌ったり1音下げて歌ったりすることがあります。こんな時にも臨機応変に対応できなければ仕事になりません。このような急遽移調して弾くことも初見演奏の範疇に入ります。
とにかく演奏の条件など、弾く度に激しく変化します。そんな時、家で練習した通りにしか弾けませんでは失業間違いなしです。

実際、オーケストラにせよ室内楽にせよ演奏する場面によって状況は目まぐるしく変化します。そんな時、家で必死で練習したことなど何の意味も無かったと思った経験がある演奏家の方などざらにおられることでしょう。ですから個人での練習をし過ぎることはある意味では良くない場合もあるのです。一人で練習したこと、つまり自分の都合だけで弾いたことが身体に定着してしまい、それが足枷となり身体及び頭脳の身動きがとれなくなってしまうのです。

大事なことは、頭をがんじがらめにするような練習の仕方は良くないということです。常に精神に余裕や遊びを持たせるような練習方法を各自編み出すべきだと思います。

一般的に初見といえばとても難しいもの、特別な才能が必要だと受け取られているようです。
私の生徒にも時々初見でデュエットなど弾かせることもありますが、そんな時大抵は、エーッそんなの私にはできません!とか言って拒絶反応を見せたり拒否反応を示します。
そこを生徒のためには無理にでもやらせようとするのです。なぜなら、私は初見演奏こそが音楽を楽しむ最大の醍醐味のひとつではないかと思うからです。それはあたかも未知の宝物を発見するのと同じことだと思いませんか?

続く