SH3H0153SH3H01551 奇跡の ビール

その店は我が家の最寄のJR放出(ハナテン)駅を出て、右方向東に5、60㍍ほど行ったところにあります。
店名もそうですが、一見どこにでもありそうな極普通の中華屋さんです、と言いたいところですが実際は少し変わっています。まず店内は何か物置風とでも言いますか、妙な段差があります。店に入る時まず一段下がります。テーブル席は一段上がるのです。いつも不思議に思うのですが聞くと怒られそうなので、いまだに謎のままです。
しかしそれは“こだわり”や心遣いが詰まった小さなワンダーランドでもあるのです。今日もとても暑かったですね、仕事も頑張ったしもう喉がカラカラお腹はペコペコです。さあ、障子戸を開けて入ってみましょう!

“いらっしゃい!”
まず顔全体に白いヒゲを蓄えたギリシャの哲学者を彷彿させる風貌の店主が迎えてくれます。
店はカウンター7席、テーブルの4席のみ。
とてもコンパクトです。
とりあえずビール、ビール!

ところで、ビールなどどこで飲んでも同じだと豪語している方はたくさんおられるかもしれません。
しかしそれは“大きな間違い”です。ビールほど飲む時の温度、グラスの清潔度合い、注ぎ方で劇的に味が変わる飲み物は他にありません。
まず始めに言っておきたいことは、この来々軒のビールは大阪では最高に美味いということです。ビールの銘柄は潔くキリンラガーの大瓶と小瓶のみ。
温度は常に2℃に保たれています。ビールは客席に置かれた冷蔵庫から自分で取り出して自分で詮を抜くというシステム。グラスも自分で取って勝手に注いで飲みます。そのグラスがまた凄いほど磨きこまれていてほんとに気持ちがイイ。曇りひとつなしのピッカピカ!
時々グラスが白く濁っていたり、濡れたままだったり、冷蔵庫で凍らせたものを出す店もありますね。凍らすなんて言語道断です。結露や氷が口に入るのですから。
乾いた綺麗なコップで飲むだけでも美味さが倍増するものなのです。まず泡立ちが違います。細かい泡が立ちとてもクリーミー。自分で冷えたビールを取り出し自分で詮を開ける、これは今から飲むぞという、これはまたビールを飲むということに対する意気込みを感じ期待感を与えてくれるある種の儀式。常に自分のペースで飲めること、これが酒飲みにとってなによりうれしいことなのです。
この店に置かれているビールはとにかくいつ来ても新しくて新鮮さ抜群。ビールは新鮮さが命!冷蔵庫は二段になっており少し温度の高めのものを飲みたい人は上段のビールを取りましょう。
さあ、ビールで乾杯!グビグビッ。プハーッアーッ美味い!
やっぱり夏はビールに限りますなぁ。なぜキリンラガーがこんなに美味くなるのか? いつも不思議におもいます。それは店主の客にたいする思いやり以外の何物でもないでしょう。

店は満席でもとても静か。一人で来ているひとが多いせいもあるでしょうが、皆静かに食事や酒を楽しんでいるようです。この店のもう一つの美味い飲み物、それは日本酒。銘柄は“菊正ピン”のみ。店主は九州長崎県佐世保市出身ですが、焼酎は置いてありません。“菊正ピン“の熱燗の温度、これまた絶妙!
あの安酒菊正ピンがここまで美味くなるものか、と。驚くこと頻り。これを来々軒マジックという。(自分でそう思っているだけですが。)酒一合二百円。