皆さん、寒い日が続きますがチェロの練習は進んでますか?

今日はチェロの弦選びのお話です。

さて、皆さんはどんな弦をお使いでしょうか。
近頃、各弦メーカーから次々と新製品が発売され、我々演奏者は選び放題、選ぶ楽しみも増えました。私がチェロを始めた頃とは隔世の感があります。

しかし、どのメーカーも新しく出る弦は値段はとても高く、おいそれと次々に新しい物を試してみるという訳にもまいりません。そこで、ある程度のガイドとしてどんな弦を張ればよいか、私の経験を元にお伝えできたらと思います。

さて、基本的に弦を張る考え方の基本としては、4本とも同じ銘柄の弦で統一しなくてはならない、ということは決してないということです。

高音が良く鳴らなかったり低音が鳴らなかったり、全体あるいはある音域の音がこもったりして楽器にも個性がありますし、楽器の古さ、にも関係しますので、その都度それに合った弦を張るべきです。ですから同じ銘柄で統一する意味は一切ないのです。私としては各弦バラバラの方が、音域による楽器の個性が鮮明に出しやすいので、その方が面白いと思います。

まず弦を選ぶ以前に、意外にも忘れられていることは、駒の高さによっても張る弦の張力を考慮しなければならないということです。高い駒に、楽器を買った時に付いていたからと、テンションの高い弦をそのまま使っている方を時々見かけます。
つまり、駒が高く弦と指板との間隔が広い楽器に高いテンションの弦を張れば左手に強い負担をかけますし、音質そのものも弦が自由に振動しない分、音が詰まった感じになってしまいます。
そんな場合はテンションの低い弦を張るか、楽器店で駒の高さを低くしてもらわなければなりません。
どんな弦を張るにしても、まず楽器の調整をしっかり行うのが基本中の基本です。
テンションが低く柔らかい音がする弦ではヤーガーのドルチェが良いでしょう。

楽器の鳴り方でみると、高音がよく鳴らない楽器は、大抵他の中低音も鳴らないものです。そんな時は、4本の弦すべてにスピロコアやダダリオのヘリコアのような細い鉄線をロープのよう編み込んだ弦を張れば、音色は別として良く鳴るのは鳴ります。
また反対に、例えば安い中国製のチェロのように、金属的で耳障りな音がする楽器は
弦の芯が一本の鉄線で出来ている弦を4本ともに張れば音は和らぎます。メーカーとしてはヤーガーやラーセンやクロムコアの弦がそうです。

次に、A線の高音が鳴らない楽器はソロと表示のある弦を張れば改善されることがあります。

ウルフトーンが強い楽器はテンションの低い弦を、例えば先ほども紹介したヤーガーのドルチェなどを試してください。

次に、楽器の古さで考えると
古くても健康な楽器ではそれほど心配はないのですが、傷が多く修復痕がある楽器は、できるだけテンションの低い弦を張らなければなりません。やはりガット弦が良いでしょう。ピラストロ社のオイドクサはガット弦ですが、取り扱いも比較的簡単なのでおすすめです。但し、A線はスチールより少し太いので、上駒と駒の溝を細いヤスリで広くしないと弦の巻き線がすぐに剥がれてしまいます。オリーブという弦は、コアがガットで出来ているのですが糸や金属を幾重にも巻いているので張りがとても強く、健康でよく鳴る楽器でないと、楽器が負けてしまいます。また弦の持ち味も発揮できません。

次に、楽器の使用目的ですが、よく最近は同じ銘柄でもソリストとかソロと特別に銘打って売られている弦があります。しっかり作られ、良く鳴る楽器では大きく派手な音がするのですが、反面、安易な楽器では楽器が負けて弦の音だけが目立ってしまい、楽器がうまく響いてくれない場合があります。
やはり、私としてはある程度高級な楽器でソロに挑む場合以外はあまりおすすめできません。

最後はどんな弦を張ってよいのかさっぱりわからない、とおっしゃる方にオススメできる弦としては、AとD線をスペシャルやスペリオールではない普通(ミディアム)のヤーガー、GとC線をヴォルフラムやシルバーではない普通(ミディアム)のスピロコア。これはどんなチェロにも合いますし、安く買えます。最も無難な弦の組み合わせだと思います。
楽器のテンションが高い場合や左手の負担を軽くしたいのなら、ヴァイヒ、ソフト、ドルチェなどの表示がある弦を張ると良いでしょう。私個人としてはヤーガーのドルチェが気に入ってます。

もうひとつ、スチールやガット以外にナイロン、炭素繊維など科学製品をコアとする弦があります。シノクサやドミナントやオブリガートなどがそうです。これらはどれもしなやかではありますが、A線などスチールに比べると切れやすいという欠点がありますし(ただしオブリガートのAはスチールです。)、良い音の期間がスチールよりも比較的短いような気がします。

以上、弦選びについて申し上げましたが、時々、弦やエンドピンまたはテイルピースなどの付属品を高価な物に替えるだけで楽器の価値まで上がってしまうような勘違いをしている人を見かけます。それらの弦や付属品はその楽器の性能を引き出す手助けにはなるでしょうが、あくまで補助としての役割でしかないということを胆に命じておくべきです。やはり楽器の鳴が良くなったり悪くなったりするのはその人の腕次第なのですから。

そしてその楽器の本質は何も変わりません。
スズキのチェロがストラディバリウスには変身しないのです。