楽器の内部

楽器に付いたケースの跡形の問題は解決しましたが、チューリヒに着いてからまた新たな問題が発生しました。
ネックが上がってしまい、弦高が下がってしまったのです。
普通、出来立てのチェロは状態が安定せず、少なくとも一ヶ月は微調整が必要となるものです。
大抵日本に入ってくる新作のチェロはネックが下がります。弦と指板の間が広くなる。つまり弦高が高くなり弾きづらいのです。チェロはとても強い力で弦を張っていることによります。

チェロの表板の裏側には低音側にバスバーとよばれる40cmほどの細長い棒が縦に張り付けられています。楽器を強くし、弦の圧力を支え、低音域の音を豊かに響かせるためのものですが、この棒はただ張り付けているだけではなく、棒の両端に向けて張力を持って張られているのです。
適当に貼られた量産品などはバスバーが弱く楽器に力がないので、長年の弦の張力には耐えられず表板が凹んでくることもあります。また古いドイツの楽器のなかにはバスバーを表板から削り出しているものもあり、これもバスバーとして意味を成しません。この場合古いバスバーを外して新しい物を張り直します。