ネック(指板)が上がってしまった状態では弦が指板に近くなり、強く弓を弦に当てれば弦が指板に触れ雑音を発することもあります。ネックが下がった場合は駒(ブリッジ)を削って高さを調整すればいいのですが、上がってしまえば駒は取り替えることしか方法はありません。駒と表板との間に薄い経木を挟めばいいという人もいますが、それでは音色が損なわれます。
そこで私は駒を取り替えることにしました。師匠の紹介でチューリヒのギー・トスティビントという楽器製作家の所へ行ってみました。そこは完全な予約制。週2日、それも午前中だけしか予約を受け付けません。それで仕事になるのがスゴイ!駒は既製品を楽器に合わせて加工するのが日本では普通ですが彼の場合、とてもこだわりが強く、駒も原木から楽器に合わせて切り出し自作するほどの念の入れよう。とても繊細な仕事でした。幸い私のチェロは調子を取り戻しました。その時の駒は今でも大切に使っております。
トスティビント氏も山本さんのチェロの製作レベルの高さには感心していました。