◎ 続き   自信を持つ

私のレッスンでは、生徒にはデュエットをはじめとするアンサンブルを出来るだけ沢山させる機会を作っています。その時生徒には、まず伸び伸び弾いてもらいます。
少々つっ走っても、音を間違っても、少々合わなくても、ボウイングが違っていてもいいじゃありませんか。まずは大きくしっかりした音で伸び伸び楽しく弾くのが先決です。
ここで“重箱の隅つつき”や“もぐら叩き”をやってしまうと、間違ったとか弾けないことがトラウマになってしまい、弾くことが恐ろしくなったり、自信をなくしてしまうことがとても多いのです。私の経験で言えば、それではアンサンブルの力はなかなか身につきませんね。
どんな場合でも、生徒にはまず、伸び伸び弾いて自信を持ってもらいたいのです。

同じような理由から、曲も生徒の程度に合った自信を持って弾ける曲を与えること。これが大切です。
傑作だから綺麗な曲だからと言って、なにも難しいハイドン、モーツァルト、ベートーベンなど難しい曲にこだわる必要など全くありません。
まず生徒が伸び伸びと弾けることが先なのです。往々にして大作や傑作は弾くのがとても難しいことが多く、プロにとってもなかなか伸び伸びとなど弾けるものではありません。プロが伸び伸び弾いているように見えるのは、立場上そう見せているだけで、内心はヒヤヒヤドキドキ、頭の中は火の車なのです。(無知、無神経さから来る伸び伸びとした演奏もありますが)
そんな難しい曲にこだわらずとも、他にも簡単且つ芸術的にもすぐれた曲などいくらでもあるじゃないですか。
バロックから現代に至るまで大作曲家の作品の陰に隠れているものの、アマチュアの集まりやレッスンのために書かれた曲など、それこそ無数にあり、まさに宝の山です。
これら無名の曲を聞いていると、ほんとにヨーロッパの音楽の懐深さを感じますね。

また、バロックから古典にかけて書かれた曲は有名な曲でなくても響きがとても豊かなものがあり、それらの曲は弾いていても理屈抜きで楽しむことができます。そんな曲は無数にあります。そのような曲を演奏することは、直接生徒の自信に繋がり合奏力の向上にも繋がるのです。このような作品をたっぷり楽しんでアンサンブルに慣れ、そから大傑作に挑めば、傑作の凄さがより理解しやすいのではないでしょうか。
難しい曲を熟すことだけが第一の目的ではなく、まずは音楽的センスを養うべきです。

続く