◎ 本格的な冬の到来を感じさせられる今日このごろですが、風邪などひいてませんか?季節の変わり目、体調管理には気をつけましょう。
私もお蔭様で元気です。風邪はひかないようにしております。

さて、今日は我が家に住み始めて6年になる老貴婦人を紹介します。老貴婦人?一体どういうこと?

ちょっと待ってください。この歳になって婆さんの愛人と住み始めたとでもお思いですか?

一挺の古いチェロのことですよ!

このチェロとはちょうど6年前の1月、以前にも紹介したことがある楽器職人の山本正男さんの工房で偶然に出会った彼女です。

工房にあったこのチェロは、ばらばらに解体されオーバーホールを待っている状態でした。
しかし、その姿を見た瞬間、電撃的というか、縁というか…とにかく強く惹かれるものを感じたのです。
好みのタイプの女性と出会った時のあの感覚に似ています。これを一目惚れと世間では言うのでしょうか。
私は今までの生涯で“ひらめき”で行動する傾向が結構強かったのですが、この時もまさにそうでした。
音が出ない状態であったにも関わらず、何故かこのチェロは絶対良い音がする!とわかったのです。
長年色々なチェロを見てきているので、弾かずとも大体どんな音がするかということぐらいわかります。
その場で購入を決めました。

このチェロは17世紀のフランスで製作された物だそうですがラベルはありません。
大体、これくらい古い楽器になるとラベルがあっても全く違うものが貼られていることがほとんどなので、ラベルなど全く当てになりません。

17世紀に生まれたって考えてみれば凄いですよね!バッハやヘンデルが生まれた時代ですものね。フランスではリュリやラモーが活躍した時代です。この現代までよく生き残ったものだと感心します。
よほど大切に使われてきたのでしょうね。

山本さんはこのチェロをスイスのコレクターから手に入れたと言っておられました。
楽器のサイズとしては少し小振り。世間では8分の7と言われる大きさです。
表と裏板の膨らみは強めですので、かなり複雑な音色を持っています。

その年の暮れになって、やっとオーバーホールが終わり弦を張ってみますと、予想以上に素晴らしい音色を持っていることに驚きました。
最低音から最高音までむらなく出ますし、レスポンスが良く各音の個性も鮮明。大きさのせいもあるのでしょうか、特にA線の透明度は素晴らしく、高い周波数が豊富で、鈴を鳴らすような華麗な音色がします。まさに貴婦人!いや老婦人。
ボッケリーニのソナタやバッハの無伴奏組曲第六番のように高音が活躍する曲には最適です。

私はこのチェロをレッスン時、特に小柄な方には気軽に弾いていただいています。皆さん一様にその響きの美しさに驚かれます。終わり

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