広響で弾いた曲

先にも申し上げましたようにあの当時広響の正団員は少なかったので、定期演奏会も比較的、メンバー構成も小さな編成が多いようでした。私が広響に在籍したのは僅か一年間だけでしたが、その期間にやった最も大編成の曲は“第九”ぐらいのものだったでしょう。
普段は音楽教室いわゆる“音教”が多かったので編成は更に小さく、チェロはつねに二人で弾いておりました。高校の“音教”では編成は大きくなりチェロが5、6人になることもあります。

そんな時、普通のオケでは余り演奏しないロッシーニの“ウィリアム テル序曲”の全曲を何度か弾かされました。普通私達がウィリアムテル序曲として知っているのは、この曲の第4部“スイス独立軍の行進”という最後の部分だけで、その前に夜明け、嵐、牧歌の3曲あります。初めの“夜明け”は5人のチェロ独奏で出来ていて、特に出だしはチェロ一本で静かに始まります。まさに緊張の瞬間!
この曲はとても難曲で、オケのチェロ弾きは皆嫌がる曲のひとつです。その当時の広響の録音がまだ家に残ってます。

あの頃、私はまだ22、3歳、大学を卒業したばかりで希望に燃えていました。もっといろいろな曲が弾きたい、大きな曲が弾きたいと常々思っておりました。しかし現実は明けても暮れても音教ばかり。やる曲も“宇宙戦艦ヤマト”“森のくまさん”や“ドラえもん”ばかりで、この先何年すれば普通のオケでやるようなレパートリーが弾けるのか全く想像も出来ない状態でした。
仕事はほとんど準団員だった現在の私の妻が私の隣でチェロを弾いておりました。
二人とも毎日同じようなスケジュール。これは親しくならないとやっておれません。
彼女は常に私の最高の理解者でありました。