牛田のボロアパート

そのアパートは現在の広島市東区牛田南にありました。
築30年は経っていそうな木造二階建て。多分戦後まもなく建てられたのでしょう。広島駅裏の低い山(二葉山といって頂上に仏舎利塔がある山を新幹線から見たという方は多いと思います)の中腹にそのアパートはありました。あの当時この区域には山の斜面に古い木造家屋がそれこそ這うように沢山建っていた記憶があります。たしか、土砂災害危険区域に指定されていたと思います。

広島駅新幹線口を出て博多方面に歩き、寂しい旧国鉄の施設を右に見て“にぎ津神社”の前を京橋川沿いに右に歩き、牛田南のバス停の前から急な坂を上る。上がったところが私の新しい住居。この坂はほんとにきつかった。この道をこれからチェロを担いで仕事に通うと思うと、暗澹たる気分です。
さて、私の初の独り暮らしとなるアパート。部屋は四畳半、壁と天井は総ベニヤ板張り、トイレ(ボットン式!)、プロパンガス、水まわり共同、風呂ナシ、家賃月1万円也。共用部には20ワットの裸電球が一つだけありました。山の中故、虫が多いのには悩まされました。ムカデや毛虫、蛾、カナブン、ゴキブリ達も我が家の住人です。でも窓からは山のふもとに新幹線の博多方面の線路が見える。西向なので夕方はほんとに美しかった。窓から遠くに見える線路はなぜかノスタルジーを感じさせますよね。
高台なので夜景はほんとに綺麗でした。