今回は私自身、長年チェロ教師、演奏家として活動してきたなか、そこで体験したことや日々考える事を、徒然にお話ししてみたいと思います。

“生徒第一号”

私が最初にチェロを生徒に教えるようになったのは、広響に入団してからのことでした。
やはり第一号の生徒は印象が強いので、どんなレッスンをしたかなどよく覚えています。その生徒は当時高校生でしたので、私とは余り年齢も変わらなかったのです。最初私の妻(広島出身でチェロ奏者でもあります)がそのレッスンの依頼を受けたのですが、当時私の収入源は広響だけでしかなく、金には困っていましたので、私にその生徒を廻してくれたのでした。広島市の已斐にある音楽教室(広島ジュニアオーケストラを主催されていた山口先生の教室だったと思います)に妻と行った事を覚えています。山口先生は私の妻の恩人でもあり、広島の音楽文化に貢献された、広島の音楽界では有名な方です。
当時私は教師としての経験が浅く、というか私自身チェロを弾く事自体まだまだ不慣れで、オーケストラの仕事を何とかこなすのが精一杯の状態でした。私がまず習わなければならないほどです。人に教える事などとても考えられないことでした。
何を教えていいのかもわかりません。全くの手探り状態。
教材は自分が習った物ばかり(当然ヴェルナーチェロ教則本ということになります)、教えることも自分が習った通りの事の受け売り。それでも必死で教えました。