もう少し丁寧にお話しましょう。

音楽とは少し状況は異なりますが。
皆さん、こんな経験はありませんか。例えば何年も前に亡くなったあなたの大切な肉親や亡くなった親友から届いた手紙が見つかったとします。
それを読んだあなたはどんな感情を持たれるでしょうか。
あの懐かしい個性的な筆跡、見慣れた便箋に感動し、
楽しかった過去の日々のことがありありと記憶に蘇り、あなたはきっと感極まることでしょう。

そこには何年という時間の隔たりは完全に消えうせ、亡くなった肉親や親友は確実にあなたの傍に立ち、あなたに話し掛けているのだということを実感されるはずです。
そうです、その時あなたは確実に過去にタイムスリップしたのです!
または、肉親や親友が手紙というタイムマシーンに乗って現在に蘇ったともいえます。
なんというファンタジックなお話しでしょう!
時間の概念がますます揺らいできますね!

私達が今生きていること自体、過去の記憶と今現在その瞬間との狭間のなかで生きている以上、それは不安定でじつに儚いものなのです。

私の母の話を出して恐縮ですが、私の母は現在アルツハイマー型認知症で苦しんでおりますが、彼女の場合遠い昔の事は印象的なもののみ覚えているということもあるのですが、つい先程の事、例えば一分前の事はもう覚えていないというのが現状です。つまり母にとっては、今その瞬間がすべてで、いま生まれた赤ん坊と同じなのだと思います。