チェロを習っておられる皆さんは、どんな音楽生活を送っておられますか?
ただひとりで黙々と、自分を見つめながら修行僧のように音楽と対話する。そんな方もおられるかも知れません。これは素晴らしいことです。
あるいは仲間を求め、オーケストラや弦楽合奏団に参加したり、さらには気の合う友人同士で室内楽を楽しむ、など活動の場は広い事でしょう。

しかし時には、同じ門下生が一堂に集まって各自の練習成果を披露し合ったり、合奏したりするのも意義がある事ではないでしょうか。心地好い緊張感を味わったり、あがってミスをして自己嫌悪に陥ったりすることも長い人生には、必ずなにかの役に立つことがあるものです。
もうすでに、そのような機会を与えてくれる教室に入会されている方も多いことでしょう。

演奏の機会といえば、まあ発表会というのが一般的でしょうね。

さて今回は、音楽教室には付き物、発表会に対する私が抱いている個人的な考えや理想を述べさせていただきます。

一般的に発表会といえば、どちらかといえば、チェロやバイオリンなら、独奏の曲をピアノの伴奏で演奏することが多いのではないでしょうか。生徒数の多い教室では、持ち時間が一人10分という事もあるでしょう。あるいは、もっと少ない事もあるかも知れません。とにかく数珠繋ぎで次から次へと演奏者が出てきます。
それでも少ない時間で成果を出さなければならないという強迫観念から(そんな心配はいらないのですが)、弾く方も、少ない時間ながら緊張して弾き、自分の出番をドキドキしながら待ちます。“何番だれそれ”、とアナウンスされると、いやがうえにも緊張感が募らさせられます。これは精神的にもキツイものがあります。これらが原因で、あまり発表会に対して良くないイメージを持っておられる方も多いのではないでしょうか。
しかし、そういった苦労の半面、せっかく発表会を聴きにに来てくれた方は、自分の知り合いや家族の演奏が終われば、用が済んだとばかりにサッサと帰ってしまう。あるいは演奏を終えた人も、その場を離れてしまったり、小さい子供なら走り回ったり、奇声をあげたり…
帰らないで、他の人の演奏も聞いて、などといちいち言うのも幼稚過ぎて嫌なものです。とにかく、よく見かける発表会の雰囲気は淋しいものがあります。これではただ弾いただけの会になってしまいます。これは何とかしなければなりません。聴衆も含めて、各自の良い記憶として残るような発表会にしなければなりません。

演奏者は皆、緊張しながらも頑張って弾いているのです。全ての奏者が平等な環境や雰囲気で弾けなければ、発表会をやる意味などありません。
発表会における演奏の良し悪しは、聴衆の態度、すなわち会場の雰囲気で決まってしまうと言っても過言ではありません。発表会をやる亊とは、生徒達がいかに集中し音楽を楽しむことができるか、いかに作品を通じて演奏者と聴衆が一つになることができるか、そして良い経験としてそれらを記憶に留めることができるか、ということが発表会をやる最も大きな目的なのです。このような目標が達成されれば、音楽を勉強する人にとっては強い力となり得るのです。その意味で発表会をやることには意義があります。
そこで良い雰囲気の発表会が求められます。では、いかにすればそのような目的を叶える事ができる良い発表会を行うことができるのか?

しかし、私が理想とするような発表会には、なかなかお目にかかれないというのも現実です。そこには会場選びにも問題が多いように思います。
発表会の成功は、まず会場の選び方から始まります。

つづく