◎ 毎日の練習  4

次は練習曲のお話です。
チェロにはピアノのショパンと同じように優れた練習曲が多数あります。これはチェリストにとっては大変喜ぶべきことだと思います。

まず私が自分の練習のために使用している曲として紹介しますと、デュポールの21のエチュードが挙げられます。
このエチュードは以前、グリュッツマッハー版のスラーとかニュアンスが沢山書き加えられた物しか手に入らなかったのですが、最近ベーレンライター社から原典版が出ていて、とても助かります。弾いてみるとまったく違う曲を弾いているような気分で、原典版の重要性を痛感します。
ちなみにグリュッツマッハーとは人の曲を何でも自分の趣味に合わせて書き換えたことで有名です。例えばボッケリーニのチェロ協奏曲変ロ長調などはまったく違う曲になってしまいました。

このデュポールの生きた時代はハイドン、モーツァルト、ベートーベンが生きた時期と完全に重なり、この時代の演奏法を知る上でこのエチュードは欠かせない曲です。

その少し後の時代になりますと、メルクの作品11のエチュードがあります。
デュポールとは時代が異なるとは言え、チェロがソロ楽器として朗々と歌う楽器としての新しい時代の到来を感じさせる曲です。書かれているメロディーとテクニックのバランスが良く(後の時代になると多くのエチュードはテクニックの探究に主眼をおかれるようになります)、メロディーがとても美しく上品で弾いても楽しく、私が大好きな曲です。
ただ、この曲は高いポジションがまったく出てこないので他のエチュードも使用する必要があります。
そこで私が使うのはポッパーの作品73のエチュードです。
この曲集はショパンのエチュードに匹敵するもので、チェロのあらゆる高等テクニックが網羅されています。
精神的に充実している時に弾くと練習の成果があがります。
その他はピアッティの作品25のカプリースなどは好んで弾きます。

続く