其ノ二
母の食生活

私の母が極度の偏食で、いろいろな物を食べないのは、貧乏ななか自分が食べる分を子供に食べさせていたのでは、と思われる方もあるかも知れませんが、決してそんな美しいものではありません。

母は今年91歳。現在、アルツハイマー型認知症で施設に入居していますが、やはり食事には好き嫌いが多く施設の方を困らせています。
嫌なものは嫌、頑固な母は嫌なものはひとが何と言おうと絶対食べないのです。

好き嫌いの多い母の好物は 米と小麦粉、いわゆる“こなもん”例えば うどんや餅、お好み焼き、タコ焼き、それから饅頭などの甘い物(洋菓子は食べません)、はやく言えば糖質ばかりですね。その他、たくあんや梅干しなどの漬物(自分でつけた物のみ)や納豆以外の豆類、海藻類(昆布、ワカメ、海苔のみ)魚の干物、そして昔からある日本の野菜の“一部”は好んで食べます。
つまり大昔の日本人の食事でないと駄目だということかも知れません。
乳製品は一切ダメ、カタカナ名の食品はほとんど何も食べられません。つまり一般の人が普通に食べるものや好んで食べる食べ物はほとんど食べられないということです。
母が最も忌み嫌う食べ物、それはトマト。“血の臭いがする、これを食べるのなら死んだ方がマシだ”とむかしから言ってます。
戦中終戦直後、母の実家があった大阪市東部の放出(ハナテン)には畑が沢山ありトマトは豊富に採れていたそうで、それを食って家族は飢えを凌いでいたそうです。しかし母だけは飢えていてもトマトだけは喉に通らなかった、と言っております。
好き嫌いでは筋金入りです。
その偏った食生活は子供にも受け継がれ、娘である私の姉は今でも母ほどではないもののかなり酷い偏食です。
私も子供の頃は家庭の影響で偏食の傾向にありましたが、今では好き嫌いは全くなく、口にできるものならなんでも食える、という体質に変化しました。
その辺の事情はこれからお話しいたします。

つづく