◎ 2 親指の感触

では、実際に親指ポジションでチェロを弾いてみましょう。

まずA線とD線の真ん中のAとDに親指を置きます。
先にも申し上げたように、親指を“グー”の形で押さえた時、親指の先は爪と肉との境目に当たっているかをまず確認してください。
次に実際に音を出してみます。
よく、AとDの音を弾く時、親指を2弦に渡って押さえ続けている人を見かけますが、これでは腕や手首が疲れてしまいます。
D線を押さえる時はD線にA線を押さえる時はA線にとバランスを移動させながら弾きます。こうすれば手首の負担を最大限軽減化させることが出来ます(AとD同時に弾く時はこの限りではありません)。また、基本的に親指は必死で押さえ続けるものではなく、ポジションの位置を決める錨(アンカー)の役割も大きいということを理解して欲しいものです。これはネックのポジションでも全く同じことが言えます。
必死でネックを掴んでいるとポジション移動もままならないことを体験された方も多いと思います。閉じた手のポジションから拡張のポジションへの移行も困難でしょう。良い音色のためには親指による力の移行が大切なのです。

さて、よく親指のポジションで弾くのはとても難しいと思いこんでいる人を見かけます。この先入観が心にひとつの壁を築いてしまいます。本来、親指のポジションそのものが難しいというのではなく、ネックのポジションから親指への移行そのものが難しいのです。親指と他の指が拡張されたり収縮されたりすることはありますが、親指を指板に上げてしまえば基本的にほぼ同じ形で弾けてしまいますから意外と楽なのです。

では何が難しいのか?チェロの形状を見ればわかるように、ネックの付け根には円い肩が有ります。チェロ演奏にはこの肩がひとつの壁となって演奏者の前に立ちはだかります。この付近のポジション、つまり第4から第7ポジションを弾くのはとても難しいということを、チェロを弾く人ならどなたも感じておられるでしょう。
特にこのポジションでの拡張の形(1指と2指が全音になる形)ならなおさらです。
エレキギターなど、ある種のギターは、この問題を解決するために肩のこの部分をえぐってあるのをご存知だと思います。
チェロではそんな不細工なことは出来ません。美観に関わる問題だからです。音色にも影響するでしょう。
では次に、いかにこの壁を乗り越えれば良いのかを考えてみたいと思います。

続く