◎2 続、コーヒーの話

ベートーベンだけでなくコーヒーは多くの芸術家や文学者の創作欲を刺激してきたことでしょう。
私もコーヒーは大好物です。
私が本格的なコーヒーを飲み始めたのは多分、大学を卒業してオーケストラに就職した頃だったと思います。
私が学生の頃は、大阪梅田新道に日響という有名な名曲喫茶がありました。コーヒー一杯で皆何時間も粘るのです。私も時々行ったことはあるのですが、飲む物は何故かいつも当時流行っていたレモンスカッシュでした。

やがて広島のオーケストラに就職し、そこで知り合った私の妻の実家が喫茶店も経営していたということもあって、彼女自身もコーヒーには結構うるさかったです。
私のアパートにも時々来て美味しいコーヒーを立ててくれました。彼女と知り合うようになり、やがて結婚しますと朝食の時、コーヒーを入れることが私の最初の役割になりました。
ペーパードリップが主流ですがサイホンでも入れたりしました。
ミルは勿論手動式のものを使います。
妻がその時いろいろ教えてくれました。それは、まずペーパーフィルターを使う時、乾いたまま直接コーヒーを入れるのではなく、
一度沸騰したお湯を、ドリッパーに装置したフィルターにたっぷり湯通しします。
これだけでドリッパーそのものも温まり、ペーパーフィルターの紙臭さも抜け、より美味しいコーヒーが飲めます。こんな単純なことですが、意外と実行している人は少ないものです。

あと妻が教えてくれたのはサイホンコーヒーです。
サイホンはドリップとはまた異なるまろやかさがありますし、部屋もコーヒーの香で満たされます。
でも手間かかかるので家庭ではよほどの暇人でないと無理ですね。まずフィルターは常に水に浸しておかないと、フィルターの布が乾燥して粉がコーヒーに溜まってしまって美味しくないし、後片付けも大変。アルコールランプを使うので子供やペットがいる家庭では火にも気をつけなければなりません。

水出しコーヒーもやりましたよ。
ポットのような形をした家庭用の器具が売られているので、家でも簡単に作れます。
低温でしか抽出出来ない成分が抽出できるので、同じ豆でもいつもとはまた異なる風味が楽しめます。緑茶もこの器具で入れると、水でしか出せない成分が飲めるので身体にはより良いそうですよ。
ただ抽出するのは時間が凄くかかります(7、8時間)。気の長い方はどうぞ試してください。
レッスンの時も皆さんにはコーヒーをお出ししました。中には私の入れるコーヒーが気に入り、お菓子持参で来られる生徒さんもいました。それは楽しい日々でした。
数年前、妻を病気で亡くして以来、飲む物はもっぱらインスタントコーヒーです。コーヒーって誰か飲ませてあげる人がいないと、なかなか美味しくはなってはくれないようですね。
“美味しくなーれ!“

続く