穴山健さん 穴山直子さんご夫妻
ご夫妻にはほんとにお世話になりました。私達夫婦にとって福岡はそれまで仕事で来ることはあっても住むとなると全くの未知の土地でありました。旅行と実際に住むことは違います。当時福岡では友人も無く心細くしていたところをまず気さくに話しかけていただけたのはほんとに心強かった。コントラバス奏者であるご主人の穴山健さんはお酒がお好きで度々お宅でご馳走になりました。お宅はとても開放感があふれ、温かいお人柄からくるためか、常に九響の団員はじめ九州大学の学生とか先生が入り浸っておりました。まさに来るもの拒まずの雰囲気。お宅には小さな山があって春にはタケノコ掘りをさせていただいたこともあります。家族ぐるみのお付き合いをさせていただいたのです。
ご主人穴山健さんは九響創立当時からのコントラバス奏者。もう退官されているとは思いますが、有明高専の国文学教授をされていました。プロ、アマ寄せ集めプレイヤーの集団を今の九響の組織に作り上げた大恩人のお一人でもあります。奥様のチェリスト穴山直子さんも九響初期からのメンバーです。九州のチェリスト達のお母さん的存在。
創立当時の九響はNHK福岡放送管弦楽団と同熊本放送管弦楽団の奏者を中心にして学校の先生など音楽以外の仕事を持つ人達も加わり始められたそうです。
そこに有るべき音が出てこない、など日常茶飯事で演奏技術は随分と酷かったと聞いています。でも今のオーケストラよりも結束力は遥かに強い。戦友といってもいいでしょうか。無から作り上げる産みの苦しみがあるからこそ強い団結心も生まれたのでしょう。技術を超越した美しさや緊張感がそこにはあったのだと思います。
穴山さんご夫妻は日本の音楽界にはとてもお知り合いが多く、私の最大の恩師でもある林峰男先生を紹介していただいたのも穴山さんでした。福岡西市民センターでの先生のリサイタルの合間、楽屋に連れていっていただいた日のことは今でもはっきり覚えています。
穴山さんご夫妻は私にとって感謝してもしきれない大恩人です。
私の師でもある日本のチェロ界の至宝“林峰男先生”のことはまた機会を改めてお話しさせて頂きます。
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