オペラ作曲家として有名なイタリアのヴォルフ・フェラーリはチェロソナタも作曲しています。
この曲は12月の私の演奏会でも演奏しますが、弾いていると色々なことが分かってきます。
まず驚くのは、この曲が1945
年に書かれたということ。
時代は第二次世界大戦の末期。世界的な混乱の中、よくこのような詩情溢れる美しい音楽が生まれたものだと感心します。あくまでも明るく、歌に溢れている。多くの人が慰められたのではないでしょうか。
 
当時、ヨーロッパではあちこちのオペラハウスが戦災を被り、オペラ作曲家は活動の場を失ったのです。ヴォルフ・フェラーリも活動の場をサロンのような愛好家の集まりに移さざるを得なかった。そこで求められたのは、小さな編成の曲。あまり知られてはいませんが彼は沢山の室内楽曲を作曲しています。
用途に応じていろんな曲を書き分けることができるのは、やはり才能のある作曲家だったのでしょう。
 
この時代、作曲の世界はどんどん調子のない音楽、無調の音楽へと進んでいきます。
つまり現代音楽。ハ長調やト長調など調性がある音楽は時代遅れとも考えられた時代でもありました。
しかし、彼の音楽はあくまではっきりとした調性の上に成り立っています。そして、全然古くない。調性音楽を突き詰めた、ある意味で天才であったと思うのです。Effect_20181107_121648